YUMEIWA LAST BOY2
 




・・・・・・・・・・・・『あの頃は楽しかったな』、なんて。
だれかと付き合い始めて、1ヶ月もすれば俺が必ず思うこと。

『あの頃』ってのは、付き合い始めたばっかの、ラブラブなときのことで。
たいてい1ヶ月もしてマンネリしてきたころに、必ずその気持ちは訪れる。

んで、・・・・・・・・だいたいバイバイ。

俺の今までの付き合った最長記録、中3の頃の3ヶ月。
傾向・飽き性、長続きしない。

(・・・・まぁ今までの、たって、
数えるほどしか付き合っちゃいないし、悔しいが、
どれも今時の中高校生に珍しいくらいに純・異性交遊だったワケだけど)


でも、今回は勝手が違ってた。

だって・・・・・・・・・だって俺は、付き合い始めることになったその瞬間から、
憂鬱だったのだから。


YUMEGIWA LAST BOY2


昨日の夜もよく眠れなかった。
2時間ごとくらいに目が覚めた。寝返りもいっぱいうった。

・・・・一度眠ったら何があろうと起きないっていう俺は、
ここんとこどこに行ってしまったんだろう。

そんな、昨日よく眠れなかった俺は今、
退屈な日本史の時間にいつものように眠くなることもなく、

先生の目もはばからず、
鳴らない携帯とこの授業中ずっとにらめっこしてる。

・・・・・・・・・・・自分でも思う。病的だ。

たぶん、あの人も授業中なワケで。
あの人のマジメな性格からして、
授業中にメール入れたりしないなんてことは、わかってるけど、

でも、でも、もしかして。もしかして・・・・・・・・・・・・・・・。


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・・・・・・・合宿で2人の悪魔のイタズラによって、
ありえないはずのことがなんとかなってしまった俺と藤真さん。

いくら俺が藤真さんに恋ゴコロと紙一重の憧れを抱いてるたって、
結果的に彼をダマしたのには変わりはないのだ。

罰ゲームで、言うつもりのないことを、
俺は無理やり藤真さんに言った。

・・・・・・・・そう、『言うつもりのない』気持ちを、
無理やり打ち明けたんだ。

藤真さんとそんな風になるつもりなんて俺にはまったくなく、
そんな大役勤めあげれるなんて、そこまで思い上がっちゃいないし、

・・・・・・・・第一、疲れそうでイヤだった。


藤真さんは、表情がくるくる変わってはっきりいってかなりキレイだし可愛いし、
本当に魅力的ではあるけれど、・・・・・・・・正直、めちゃくちゃ近寄りがたい。

神経質そう、プライド高そう、ワガママそう、
頭良いだろうから俺なんかバカにされそう・・・その他もろもろ・・・・。

・・・・そんな無理めの人と付き合うなんて、
疲れを背負い込む以外のなんでもない。常に緊張してなくちゃならない。

実際あの人といると、逆に自分にどんどん自信がなくなってくのがわかるんだ。

・・・だから・・・だから見ているだけでよかったのにっ!
あの湘北の凸凹悪魔コンビめ!!


あの合宿から・・・・つまり俺が藤真さんと一応付き合うようになってから
悲しいかな、俺の野性的カン(?)は当たった。

俺は、藤真さんをだましたという罪の意識と、
いつもの自分をさらけ出せなくて、常に強いられる緊張に潰されそうになってた。

はっきりいって、それは拷問に近かったように思う。

とはいっても、実際に藤真さんにあったのは2度だけ。



・・・1度目は、付き合って10日目の日曜日に、一緒に行った映画。
藤真さんから誘ってきて、一緒に見に行った。

誘われたときから行きたくなかったけど、断ることもできなくて。
うまくウソをつけたらいいのにって、思った。


・・・見た映画は、アクションもので。
すげぇ観たいって思ってたものだったけど、
右隣の藤真さんが気になりすぎて、半分も内容を覚えていない。

ずっとずっと右半身だけ、麻痺したみたいに甘い痺れが通ってて、
涼しいはずなのにどくどく汗がでて困って。

・・・・横目で垣間見た藤真さんは、すっげぇ、
・・・とにかく言い表せないくらいキレイで、

俺は目ぇまん丸にして、口ぽかーーんって開けたアホ面で、
たぶん金縛りにあったみたいに固まってた。


・・・そしたら突然藤真さんが俺の視線に気づいたように振り返ったんだ。
そりゃ、俺もあわてて視線を振り払ったさ!
あんなお人形目に見つめられて、石にでもされたらたまんない。


・・・んでさ、それから映画のあと、どうしたかって。

俺はもうその緊張感に耐えられなくて、
前の日にアイス食いすぎたから腹痛いって言って、帰ったんだ。

だから、映画のあと藤真さんがどうしようとしてたのかは、知らない。

藤真さんは、
「そうか、今日は付き合ってくれてありがと・・・・お大事にな」
・・・って言ってた。

そのときの彼の顔は・・・よく見ていない。見られなかった。

けど、ちょっと残念そうにしただけで、別に普通だったと思う。

・・・・・・・アイスの食いすぎで腹痛なんてだいぶ情けないし、もちろん嘘だし、
藤真さんにまた嘘ついたっていう罪悪感は募ったけど、

でも、しょうがなかった。あれは、緊急避難だった。

・・・・・あのままじゃ、ほんと
俺の心臓がいつ破裂してもおかしくない状態だったから、

藤真さんが、俺をこんなにもドキドキさせるから悪いんだって、心の中で思った。



・・・・・・それからお互い、毎日メールを1日2、3回くらいやり取りした。
メールの内容ってのは、「おはようございます。」とか「おやすみなさい。」とかの
決まり文句・・定型文にその日にある(あった)ほんとしょーもないようなことを付け加えたものだ。

1度、寝る前に『こんばんわッス。今日は数学の小テストで
10点満点中9点とりました。おやすみなさい』

って、メールいれたら(こんなメールでも作るのに10分はかかった)、藤真さん、

『お前数学1番ニガテだって言ってなかったか??
すごいな、ホントえらいよ、よくやったな!』

・・・・って返してきたんだ。
藤真さんが、俺をほめてくれたんだぜ??

・・・・・・・俺もう、天にも昇るくらい嬉しくて 『よっしゃーー!!!!!』 って
夜中なのに大声で吠えて、

・・・姉キに、うるさいってぶん殴られたんだ・・・・・。

でも、殴られても嬉しくって、ほんとに嬉しくってまた叫んで、また殴られた。
・・・今でもそのメールは保護ってある。


・・・そんな風にどうしようもないくらいの内容のメールのやりとりだったけど、
俺はすっごい夢中になった。

このメールに藤真さんはなんて返してくるかなって、
こんなこといったら驚くかなって、

いつもどきどきしながら、
1つの短いメールつくるのに何十分もかけて何度も見直して、
送ってもまだどきどきしてて、メールの着音なるとうれしくて、

メールが藤真さんからじゃなかったら、
ムカついて、がっかりして、携帯投げちゃって、
藤真さんだったら食い入るようにメール見て、
何度も見て、1人でにやけてた。

・・・ほんとに藤真さんのことばっかり考えてた。
メールが長い時間返ってこなかったりすると、
藤真さんの身に何か?!って思って、気が気じゃなかった。

・・・とにかくメールはほんとに楽しくて、
最初の憂鬱な気持ちはどこへやらだった。

俺みたいなヤツでも、藤真さんとメールできてる。会話できてる。

もしかしたら俺・・・藤真さんとやってけるのかもしれない、そんなふうに思い始めていた。

・・・そしたら、無性に藤真さんに会いたくてしかたなくなってきたんだ。

藤真さんに、会いたくて会いたくてしかたなくなって、

でも勇気がないから言えなくて。
それにお互い忙しいから、言えなくて・・・。

そんな会いたいけど会えない、メールだけのやりとりが続く中で、

「・・・急な話だが1週間後、翔陽との練習試合が入った」

高頭監督からその発表が告げられたのと、

『25日だ。おまえらのとことの練習試合が、今日正式に決定したぞ。
お互いがんばろうな、手加減なしで!!』

・・・・・なんて藤真さんからのメールがあったのは、ほぼ同時だった。

それで、俺は藤真さんのメールにこう返したんだ。

『試合お互いがんばりましょう!
試合の後、片付けとか時間食っちゃうかもしれないですけど、よかったら会えませんか?』

って。
・・・初めて、俺のほうから誘った。

そのメールに、藤真さんは
『いいよ、片付けあっても待ってるから、会おう!』って、返してきたんだ。

・・・そのとき俺は部室だったんだけど、やっぱり
 『よっしゃーーーー!!!!!』 って大声で吠えてしまってた。

んで・・・高砂さんと武藤さんに、うるさいってぶん殴られて・・・。
でも、殴られても嬉しくって、ほんとに嬉しくってまた叫んで、また殴られた。

・・・・・・・・・もちろん、そのときのメールも、即行保護った。


・・・・・・・今思うとこれが、俺たちが一番良かったときなのかもしれない。


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25日、翔陽との試合の日。
待ちに待ったはずの日。

・・・・・・・俺にはやっぱりムリだった。

俺が、俺が今まで毎日メールをしていたのは、本当にこの人だったのか?
って、信じられなくなったんだ。


藤真さんは、
たくさんのデカい翔陽部員に囲まれてて、そいつらにテキパキ指示出してて、
理性的で表情が厳しくて、めちゃくちゃ落ち着いてて俺らと同じ高校生にはとても見えなくて、
そんなの監督なんだし当たり前だし、何度かこんな光景みたはずなのに、

・・・メールで感じ始めてた親近感が、それ見たら一気に吹き飛んじまって。

藤真さんが、すげぇすっげぇ遠くの人に見えて、
なんか本気でやりきれなかった。

・・・俺は、そんな雑念ばかりで試合に集中できなくて、
後半開始の頃には交代させられた。

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・・・・・・結局試合は、海南が2点差で逃げ切った。

勝ったからというものそこまでお咎めもなかったけど、俺の不出来は明らかで。
俺は、なんともいえないモヤモヤを胸のあたりにつかえさせてしまった。


・・・1年で片付けを終えて、更衣室に戻ったら携帯に、新着メールが1件。
『大通りの本屋の前の、コンビニで待ってるから。急がなくて大丈夫だぞ』

って。

ああ・・・藤真さんからだ。

さっきの、知らない人みたいな藤真さんからだ・・・。

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片づけを終えて、コンビニに向かったけどその足取りはものすごく重くて。

・・・・・店まで行ったけど今度は入る気が起きなくて、

ちょっとして藤真さんが店の窓ガラスごしに俺を見つけて、出てきてくれた。


「・・・・よう」
「スンマセン、待たせちゃって・・・」
「いや、全然構わない・・・今日はお疲れな」

・・・なんて、一連の挨拶みたいなものを交わして。

どちらからともなく・・・・たぶん俺から背中を向けて
駅に向かって歩き出した。


・・・・俺が、藤真さんの前を歩いている。
俺は今、すげー早足。
ちょっと離れたところから、藤真さんの足音がついてくる。
その足音が・・・・・必要以上に早足の俺に遅れをとらないように、
すごく必死に聞こえる。

『清田、早いよバカ、待てよ』って、
必死に、必死に俺を引き止めてる気がする。


黙ってるなんておかしい。

・・・・こんなの、普段の俺のキャラじゃないっすよね。

俺は、何がこんなに面白くないんだろう。

ずっと会いたかったはずの藤真さんが、振り返ればすぐ後ろにいるのに。

今日俺、ミスばっかやらかしたから落ち込んでんのか?

メールやってて身近に感じてたはずの藤真さんだったけど、
やっぱり雲の上の人で、ついていけないって思ったから?

俺だけの藤真さんってつもりでいたら、
藤真さんにはあんなに部員がいて、俺は所詮敵チームだって、改めて思ったから?
翔陽のやつらに嫉妬してるのか??

何が何だかわからないけど・・・
こんなの、つきあってるなんていわないよな?

だいたい、
藤真さん、こんな俺のどこが好きなんだろう?

・・・彼が俺を好きってのは、ほんとうなんだろうか?

・・・・・そんなこと考えながら、大股でスタスタ歩いてたら、

後ろで健気に俺を追っていたはずの足音が、なくなっていた。

・・・・驚いて振り返ったら、だいぶ、遠くに、

ちょうど罰ゲームで告白したときくらいの距離に、
藤真さんがうつむいて立っていた。

「・・・・・・・・・・なんか、迷惑だったか・・・・な」

・・・・・・・・藤真さんのその言葉に、俺はギクッとした。
迷惑なわけ、ないのに。
ずっと俺は、藤真さんと会える今日を、待ってたっていうのに。
なんでギクッとしたのか、自分で自分に尋ねたいくらいわからない。


『全然迷惑なんかじゃないす!』

『今日の俺のプレイ散々だったから・・・・こんなテンションですんません・・・・・』

『藤真さんに、ずっと会いたいって思ってたんスよ。
試合の後のことばっかり考えてたんです俺!』

・・・全部、ちゃんと本音ばかり、
たくさん、ちゃんと頭に浮かんでるのに、

どの本音も、
俺の口から言葉になって飛び出してはくれなかった。

・・それは、俺がまた藤真さんに距離を感じてしまったからなのかもしれないし、
試合の出来が悲惨だったから落ち込みすぎて明るい事が言えなくなっていたのかもしれない。

きっと、その両方だったに違いない。

・・・今の俺の気持ち、ぐちゃぐちゃで色々ありすぎるけど、
甘えかもしれないけど、全部吐き出してしまえば彼にわかってもらえる気もした。

なのに、なのに、

言葉になってくれない。ぐちゃぐちゃでいいとさえ思っているのに。

格好つけたい俺が、それを許してくれない・・・。


「・・・お前、すっごいムリしてるよな・・・俺といるとき。
この前映画行ったときも・・ウソ、だったんだろ。腹が痛いなんて・・・」

「ぁ・・・」

「いいよ、ずっとわかってた・・・お前ほんとうはオレのことなんか・・・」

「ち、違・・・・・・!!」

「・・・だからオレは、お前にそんな顔しかさせられないんだ・・・・・ゴメンな」

俺、今、どんな顔してるんすか??
困ったような、泣きだしそうなような、情けないツラ、あなたにさらしてますか・・・・・・??

俺にそんな顔しかさせられないなんて・・・それは、俺も同じです!!

・・・藤真さんのこと、つきあってから笑わせたことなんて1度もありません。

たった、たった2回会っただけなのに、いつも藤真さんは寂しそうで・・・・・・

それは俺の、全部俺のせいなんッす!!

俺に、俺にあなたとやってく自信がないからなんですよ・・・。

こんなへなちょこで、ごめんなさい!!

でも、見捨てないで!!

俺、いい男になるから!!あなたに、ふさわしい・・・。

そう、そう言いたいのに、俺の方こそ土下座して謝りたいくらいなのに、

金縛りにあったみたいに、言葉を失ったみたいに、体が動いてくれない。

「・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・もう、いいよ。いつも笑ってて明るいはずのお前に、
オレは、オレはそんな顔しかさせられない・・・・・・困らせることしかできない・・・・・情けないよ」

「ふ、じまさん・・・・・・・・・・!?」

「・・・今日はわざわざ来てくれてありがとな、じゃぁ・・・・」


・・・・・・・そういって一瞬顔をあげかけた藤真さんの目に、
大粒の涙が、いっぱい、いっぱい溜まってた。


「藤真さん・・・・・・・・・!!」

・・・ほんっとうに情けない俺。
彼の涙で、初めて金縛りが解けるなんて。
でも、その瞬間には、彼はもうあの俊足で
どこかに駆けていってしまったあとだった。


********************************************************:

それから3日。

藤真さんからはなんの連絡もない。

当たり前だ、愛想をつかされたに違いない。

だって、藤真さん・・・・泣いてた。

あの、気丈であるだろう藤真さんが。

一番笑わせたい人を、泣かせてしまった。

一番喜ばせたい人なのに、悲しませてしまった・・・・俺が情けないせいで。

謝りたいけど、それすら今の俺には許されるのかわかりません・・・・・。

ごめんなさい、ごめんなさい藤真さん・・・。


昨日の夜もよく眠れなかった。

2時間ごとくらいに目が覚めた。寝返りもいっぱいうった。

・・・一度眠ったら何があろうと起きないっていう俺は、
ここんとこどこに行ってしまったんだろう。

そんな、昨日よく眠れなかった俺は今、
退屈な日本史の時間にいつものように眠くなることもなく、

先生の目もはばからず、鳴らない携帯とこの授業中ずっとにらめっこしてる。

・・・自分でも思う。病的だ。

たぶん、あの人も授業中なワケで。
あの人のマジメな性格からして、
授業中にメール入れたりしないなんてことは、わかってるけど、

でも、でも、もしかして。もしかして・・・・・・・・・・・・・・・。


ほんと今更だし、

・・・・・・・・もうほとんど絶望的ってこともわかってる。

ずっと見ていられるだけで十分って思ってたし、

最初は確かに罰ゲームで始まったけど、憂鬱だったけど、

今でも俺が藤真さんとつり合う男だなんて思い上がっちゃいないし、

・・・・・・・・・でも、でもここで終わってしまっていいのか、終わらしてしまっていいのか・・・・って。



・・・・・・・・・嫌なんですよ、終わるなんて

俺は、俺は・・・・・・・・・・・・、

ほんとうはそんなのカンベンっす!

俺は絶対嫌なんです、藤真さん・・・・・・・・!!




な~~んか乙女でうじうじなフタリ。
自分的に、清藤は基本レズだと思っています。
2人して女体化するなら、藤清もアリだと思っていますw
(むしろ女体化するならそうであってほしい)
BGMはトミーフェブラリー系(乙女チックでキラキラ系)でお願いします(笑)。