Fを束縛する3つのパターン

Hの場合


男が相手を束縛する場合、ケースが3つあると言われている。

 

    自分に自信がない場合

    相手に経済的、精神的に依存している場合

    相手のことを1番、何よりも好きな場合

 

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「おまえは、嫉妬とかしないの?」

俺は、黒ブチメガネがさっきから興味深そうに読んでいるハードカバーの
『宇宙の全貌』というタイトルの、カバーからして色んな意味で怪しい本を取り上げながら言った。

それを自分の顔の真横に持ってきて、やつの注目を引くようにする。

本より俺を、見てろよ。

俺だけ、見てろよ。

 

「・・・しっと?」

やつは・・花形は目を丸くして、ゆっくりと瞬きをする。言葉の意味を咀嚼するように。

癪なことに、こいつがたまに見せるこの類の間の抜けた表情を
俺は 可愛い と思ってしまっていて(
197センチの大男相手に可愛いもクソもないのに)、
こいつの数ある表情の中でかなり好きな部類に入るのだが。

やつがこういう顔をする時はこの後、
結構な確率でロクでもないやりとりがある前兆なので、侮れない。
 

ゆっくりと瞬き。そして、もう1回。
おーおー、また随分とのんびりしてやがる。

きっと、この間に無駄に豊富な語源データベースの中から「しっと」を検索しているのだ。

作業に思いの他時間がかかっているのは、
恐らく彼にとってその言葉が普段の生活と遠いところにある、馴染みのないものだから。

いつもなら、打てば響く受け答えをするってのに。

一般常識から難関大学入試レベルの問題、世界情勢、天体に関すること、歴史に関することまで実にオールジャンル。
高性能で超ハイスペックなこのソフトとハードなのに。

それが・・何だ、今は。みっともない。
砂時計が出っぱなしのままフリーズ状態だ。逼迫しすぎ。
ポンコツめ。スプラッタにしてやろうか。

俺は、実際にパソコンがそうなったときにやる癖で、
マウスをカチカチするように人差し指をイライラと何度も動かした。

それでも、黒ブチメガネはまだ固まったままだ。

この男・・そう、黒ブチメガネもとい花形透は、
恋愛に関することのみ自慢の処理速度が格段に落ちるのだった。

 

「しっと、って、ジェラシーか?ヤキモチのこと??」

・・今までかかって、重たそうに口を開いて、
やっと出てきた言葉がそれかよ。俺は、心の中で舌打ちをする。

「他に、何がある」

sitshitか。日本人には使い分けが難しい発音だ。
間違えると
sit down もshit downで 座って というつもりが クソ垂れろ になるから要注意。怖いな」

「・・誰がクソの話をするかよ」

今度こそ、俺はあからさまに舌打ちをした。
こいつのこの冗談みたいな言動が、馬鹿にしているでも誤魔化しでもなく
天然故にやっていることだということは、長い付き合いの中で学習済みだ。

・・しかし、天然は故意よりもよっぽどタチが悪いということも、
俺は痛い程、知っている。

 

「クソじゃなければ、やっぱりジェラシーの話だな」

そうだよバカ形。おまえはバカだ。
どんなに宇宙みたいに広大な知識があったって、
どんなにブラックホールみたいに呑み込みが良くったって、
俺から言わせればおまえなんてやっぱりバカだ。

 

「嫉妬って、俺が藤真に対して?どうして俺が嫉妬するんだ」

「どうして、だと?」

・・なんかムカつく。

「おまえが信頼できない人間ならともかく。藤真のことは信頼してるし」

何か優等生の回答してやがる。でも、やっぱりムカつく。余計にムカつく。

いくら長い付き合いだからと言って、
この、人を開けっ広げに信頼して裏切られることなんて微塵も頭にない、純朴さと単純さが。

それが長い付き合いから出た怠慢さからでないと思えるのが、余計に。


「信頼してるからって嫉妬しないワケじゃないだろ」

「え?そうなのか?・・そう言えばちゃんとした嫉妬の定義って知らないな」

そう言いながら、速攻でパソコンで意味を検索し始める。

「・・自分の愛する者の愛情が、他の人に向けられるのを恨み憎むこと、だってさ!」

「ほら見ろ。信頼してないからする、なんて記述ないだろ」

「本当だ・・!これは完全な思い込みだな。思い込みと言えば先日髪の毛を切りに行った時、
美容師に分け目どこですか? と聞かれたから俺は 真ん中です と答えた」

「ほう。それで?」

「美容師が髪を分けてくれたんだが、俺はそこがいつもよりいくらか左に寄っているように思った。
だから そこじゃなくて、もう少し右です、ここです と言った。すると美容師が笑いながら 
お客さん、ここが分け目なら真ん中分けではないね。右分けだよ。
7:3(シチサン)分けとまではいかないけど、6:4(ロクヨン)分けだね と言ったんだ」

「・・それで?」

「だから、俺はいつもの自分の分け目が真ん中だと、いつの間にか思い込んでいたってことさ!
俺は中学の頃からこの髪形で、分け目を変えていないんだ・・実に十年以上も思い込んでいたのさ!
・・自分の思っているあらゆる普通や常識は、自分勝手に書き換えたデフォルト値なんだって気付いたよ。
いやぁ、あの時は参ったね。とても恥ずかしかったよ。そのことに気付かせてもらって良かったさ」

・・世紀の大発見みたいに言いやがる。
こいつは、些細なことでも感動できる、低燃費極まりないエコ男だ。
わずかな出来事をガソリンに、どこまでも思考を突っ走らせる。

「ところでだ。何故自分の愛する者の愛情が、他の人に向けられたら恨み憎むんだ?
自分のことも愛してくれていて、他人も愛せるなんて、素晴らしいじゃないか。嬉しい事ではないのか?難しいな」


まったく・・・。

いつまで経っても、呆れるくらい人が良い野郎だ。

 

花形は、大人っぽくて落ち着いていて、いつも余裕があって?
そしてその大きな器で、ワガママで女王気質の俺のお守りをさせられている、って?
花形君、大変~、苦労症~、って?

・・・周りから、こう思われていることは何故か実に多い。

が。

その訴えに、異議あり!
ハッキリ言おう。それは、違うと。

声を大にして言おう。
見せかけに騙されるな。この男の物腰と、人当たりに。

花形が、おしゃべりな俺の相手をいつもさせられていて、
大人しく聞き役に徹していると?馬鹿なことを。
俺もまぁまぁ喋る方だが、花形はその俺より3倍はよく喋る。2人でいれば、大抵俺が聞き役なのだ。

・・それにしたって、少し俺たちを見ていればわかることに思う。
実にわからん。

周りの想像力と、
理解力がなさすぎるのではないか。

 

・・確かに花形は器が大きい。

でもその言葉をこいつに使う場合、それは
大人の男に使う場合とは違うニュアンスを持っている。

大人の男のそれを・・器をキャパ=包容力、だとすれば

花形の器=享受力、とでも言おうか。

彼の場合は器が大きいというか、器自体がないので、底なしなのだ。ブラックホールだ。

彼の器は、宇宙全体なのだから。

花形は、見かけだけは無駄にデカいし大人だし、常識もあるが、
・・実は心はまんまお子様なのだ。

恐らく、精神年齢は5つ、6つくらいだと思う。
そしてその年の子どもがそうであるように、彼はスポンジなのだ。

それこそなんでもかんでも吸収してしまう。
しかも知的好奇心も異常に旺盛だ。

子どもだから、警戒心もほとんどないし、善悪の判断も曖昧。

全ての事柄において、フィルターやボーダーを設けていない。偏見もない。

・・だから、男の俺とも俺がある程度気にするのも気にしないで、
まったく平気な顔で付き合っていられるのかもしれないが。

 

やつの、子どものように好きなことをやり続ける集中力はハンパじゃない。

放っておけば、メシを食うのも寝るのも忘れて、一晩中机に向かっていたりする。

だが、当然だが彼自身は子どもではない。

知識とスペックだけは無駄に高い大人なのだ・・だから、余計始末が悪い。厄介だ。

やつが集中しているものの内容は、だいたい俺の頭のネジがふっ飛びそうになる次元の話で。

 

例えば、突然
「良心って、どこから来るのかな?」だ。

「だって、この世のこの現実は、自分にとっては自分が生きる間の限りのものなんだ。
ということは、何をしても良いということにならないか?大袈裟な話、嫌なやつを殺したっていい。
なのに、何故みんな殺さないんだ?殺したら、何が、誰が困るんだ?死ねば全部なくなるのに。
なくなるということは、この世は夢か?夢と言うなら、ますます何をしても良いことにならないか?」だ。

 おまけに昨日の夜など、
「量子力学の観点から行くと、瞬間移動もできるはずなんだが」なんて言い出す始末。

「俺の見解だと、問題なのは物理的な事柄よりもむしろ精神的な事柄なんだ。
精神的に できない と制限を設けたら、どうあってもできないんだよ。
あっ、ちなみに精神的と言うのは顕在意識だけではなくて、潜在意識、つまり無意識も含めてなんだけど。
例えば、どこでもドア が出来たら車も飛行機も、電車も自転車も、
移動手段が何1ついらなくなってしまうだろ。

そうすると、それの製造や運転や運搬に従事している人々が職をなくして、
その家族たちまで路頭に迷うことになる。あ、道路も信号もいらないね。国交省も道路交通法も廃止。
結果、何十億人と困るだろう。

それに、第一そんな道具、使われた方の人権が守られたものじゃない。
ストーカー規制法も形無しさ。犯罪の温床になって、発売から
3日もあれば世界が崩壊すると思うんだ・・・。

って・・ほら、こういう否定的な考えをいくつも持った途端に、本来は可能であることが不可能になるんだ。
こういうことは、驚く程多いぞ。魔法も、その1つだな。人間はみずから不便な方を、不可能な方を選んでいるんだ。
不便な方が利益になると、生き残れると人類が無意識に悟った結果なんだよ。現代社会は」」

・・こんなヘビーな話を朝、起き抜けに聞かされる俺の身にもなってほしい。
やつは、こういったどれだけ考えても答えが出ない堂々巡りになりがちな議題を
とめどなく考えまくるのが好きなのだ。
迷惑な趣味だ。

宇宙の話、宗教の話、哲学の話、医療の話・・
様々なジャンルの話を、様々な理論を引き合いに出して、
時には文献を引っ張り出し、時には難解な計算式を使って、紐解こうとする。

・・結末にはその紐が、最初より手の施しようのないくらい絡まっているに違いないのに。

それで、気は狂わないのか?と思うが、狂わないらしい。
考えているときのやつはどこまでもポジティブで、ますます生き生きしている。
本当に、どうしようもない。

こういうやつが考えに考え抜いた結果、突然世捨て人になったり、
怪しい新興宗教に走ったりするんだろうな・・と
最近、俺は本気で心配してしまう。

 とにかく、こんなことでは花形がいつか悪意を持った人間に
騙されてしまうのは間違いない。

こんなに騙しやすい根っから坊ちゃん気質の純朴な、馬鹿の天才はなかなかいない。

・・おまえをダマす人物がいるとすれば、それは俺1人で十分なのに。

おまえがそんなに無防備なのは、俺の前だけ。

大人しく、そうしてれば良いのに。

 

「ほんとムカつく。おまえって」

「え?どうしてだ!?・・俺、何か藤真の気に触ること言ったか?」

「おまえは嫉妬なんてしないから、束縛なんてしようがない」

「嫉妬?束縛?を、どうしてするんだ?」

今度、そくばく、は一発で漢字変換できたようだ。返しが早い。

今までの会話の脈絡から、類義語を拾ったのかもしれない。が。

「藤真の嫌がることは、したくないだろ」
・・俺が束縛がされるのが嫌だと、一体いつ言った。

 「・・それは、自分が俺からされて嫌なことを俺にはしない、っていう考えからか?」

「俺が?藤真に?束縛されて嫌だと?」

「嫌なんだろ」

「・・されたことがないから、わからないな」
自信満々に言い放つメガネに、俺は大きな溜め息を隠しきれない。

 

本当に良い性格してやがる。

こういう時、嘘でも「おまえになら束縛されてみたい」とか「おまえのすることなら何でも良い」
とか言えないのかよ・・

って、恋愛の駆け引きの要素をこいつに期待するだけムダだな。

 

そしてメガネは、しばらく思案顔を巡らせていたと思ったら
目をぱちくりさせて、「やってみるか?」と言い出した。

 

「はぁ?」

「束縛と嫉妬。やってないからわからない。実際にやってみよう」

コレだ。まるで化学の実験でも始めるように。

「お前ね・・そういうのは宣言して始めるもんじゃねーんだよ」

「何故だ?導入にルールなんてないだろ?・・さあ!してみてくれ俺を。束縛と嫉妬をくれ!」
なんて嬉しそうなんだ。おめーはよ。ドMか!

「・・面倒なこと言い出すなよ!」

知っていた。

このメガネは、根っからの研究者気質。

気になりだすと、とことん掘り下げる。片っぱしから調べまくる。

それをさせるのは飽くなき探求心と持続力。

子どもの持つ、好きなことをやっているときの異常な集中力。

そしてそれに火をつけてしまったっぽい俺。

・・沈下するには、そうとうな労力を要すると予想される。

 

100歩譲って、今からそれを始めるとしてだ・・
何で俺がおまえを束縛しなきゃならんのだ。逆をやれ、逆を」

「逆って、俺が藤真を束縛するってことか?」

「そうだ」

「それは無理だ」
あっさりと。
・・こいつがやる前から不可能と言い出したことなんて、今までないのに。

「何で」

「だって、自信がない。嫌われたくない」

「は?」

「だって、束縛や嫉妬する俺なんて、おまえ嫌いになるかもしれないだろう?
嫌われない自信、俺、ないから」

「・・おまえだって、束縛や嫉妬する俺を見て、嫌いになるかもしれないのに?」

「いや、俺はおまえのそういうところを見ても嫌いにならない自信がある」

「そんなこと、言い切れるのかよ。すぐに嫌になるかもしれないのに」

「嫌には、もしかしたらなるかも知れないが」

「ほら」

「でも、嫌と嫌いは違う。
その瞬間、そのことだけが嫌になったところでおまえ自身を嫌いになることはない・・それだけは自信があるな」

「何だよそれ」

ちょっとだけ、嬉しいぞ。

「当たり前だ」

本当に当たり前のように言い放つんだな。

「それって、盲信って言わないか?嫌でも、好きなんて」

「だって、藤真は俺にとっては絶対だから」

「絶対?絶対なんて、絶対ないんだろ。前に言ってたじゃん自分で」

・・あれは、法則の話をしてた時だったか。その時に、確か言っていた。

「それでも、あるんだよ。大原則が。
それだけは、絶対変えてはいけないし、絶対変えられない」

「変えると、どうなるんだ?」

「すべての物体やエネルギーの軌道がおかしくなって、
世界が歪み、地球は燃え尽きるか凍りついて、最期は宇宙が終わる」

「う、宇宙が終わるのか?」
スケール、デカすぎだろ。
そんな恐ろしいことを、けろっとした顔で言い放つな。

「そのくらいの破壊力はあるはずだ。俺にとっても、人類にとっても。
地球から太陽までの距離と同じだな。近日点、遠日点の違いはあるにせよ、
1億4960万km ± 250万km 。都合500万kmも距離が変わるが、それも%で表せばわずか3%程だ。
距離自体はほぼ安定的。もし、これが不安定であれば、地球が太陽や他の惑星と衝突するような大事態に成りえる。
安定的だからこそ太陽の周りを数十億回も回れるんだ。
この距離が保たれているのは、地球上の生物が生きていくための大原則なんだ」
・・何か途方もない大袈裟な話になってきたぞ。

「・・花形が俺を好きだというのが、生物が生きていくための大原則と同等だと?」

「ご名答」

「・・すごい滅茶苦茶を言ってるぞ、おまえ」

「当たり前のことを言ったまでだ。言い変えると、俺が藤真を嫌いになるのは不可能だ、という大原則、かな」

「何だそれ。不可能は、勝手にできないって幻想の制限設けてるだけだって、お前昨夜言ってたじゃないか。
否定的な考えを持った途端に、可能であることが不可能になるって」

「ああ、確かに言ったな!藤真、しっかり俺の話聞いてくれているんだな。嬉しいぞ」

「感動してないで俺の話を聞け!おまえが昨日言ってた理論から言うと、
俺のことを嫌いになれないというのはおまえの単なる思い込みってことになるぞ」

「ああ、そうだな」

「そうだなって」

「思い込みの力は恐ろしい程偉大だ。さっき、髪の分け目の話をしたろう?」

「ああ」

「俺は、真ん中を何十年も勘違いしていた。思い込んでいたんだ。これは自己催眠の一種だな」

「・・今回の分け目の話みたいに、思い込みが突然解けるかもしれないぜ?」

「そう簡単には解けない」

「それでも、絶対じゃない。何かの拍子で解ける可能性は十分だろ」

「その時は・・また、自分から催眠にかかるよ。思い込むんだ」

「・・何で、そこまでして?」
そこまでして、俺といたいんだ?

「うーん。なんでかな・・あれ?なんでだ?
宇宙が終わるのが嫌だから?何故嫌なのだ?藤真を好きだから?何故好きなのだ?
離れたくないから?離れたらダメだと思うから?何故離れたらダメだと思うんだ?
生きていけない気がするから?何故生きていけない気がするんだ?
いや、生きてはいけるが藤真がいないと楽しくないからか?何故藤真がいないと楽しくないのだ?」

 

何故?何故?・・・と繰り返して自問自答で掘り下げ出す。

はっきりいって、傍から見たらかなり不気味。
相当、おかしい。職質レベル。

なのに。

ちくしょう。こんな滑稽なイカれた大男を可愛いなんて思う俺は、相当重症で。

 

ちょっと残念だが、花形が俺を束縛するなんて、やっぱりないのかもしれない。

男が相手を束縛する場合、ケースが3つあるとTVでやっていたが
この男の場合、まずその3つにまったく当てはまる要素がない。

3つでは少なすぎる。
世界、どころか宇宙のスケールを持っている、この男では。
器が自体がないなんて、底なしなんて、反則だ。
享受力がデカすぎる。

それに俺のことを大原則で好きでいてくれても、
やつには束縛という無駄な高等スキルも腐った大人の概念もない。
どこまでも、子どもっぽく、純朴なのだから。

・・そう、花形透は、宇宙なのだ。


そして・・・むしろ、俺が花形を束縛したくてたまらないのだ。

何故だ?

花形はいつも、俺に様々なぶっ飛んだ持論を披露してくる。

まるで飼い猫が、獲物を捕まえた時にご主人様に得意げに見せに来るように。

ずっと・・話を、聞かされていると思っていた。

だが、その話をいつも楽しみにしている俺がいる。

それがなくなったとして、耐えられないのは、彼ではなく・・・。

 

そう。依存されているように見えて、実は

俺が花形に精神的に依存しているのだ。

そして、きっと、1番好きなのだ。


花形。俺もだよ。

おまえのことを束縛したいって気持ちも、おまえのことを好きだっていう気持ちも、
思い込みでも、何でも構わない。この気持ちがそうなら、それで上等だよ。

もし、万が一この思い込みが、催眠のように解ける時が来たのなら、
その時は俺ももう1度、自分から催眠にかかって、軌道修正するよ。

そんな必要は、きっとないけど・・・。

だって、絶対の大原則が、2人の間には存在するのだから。
ずっとずっと昔から、まるで、地球と太陽の関係のように、動かし難いものが。

俺も、おまえのことを嫌いになることは、不可能だ。絶対にない。
そしておまえを、ずっと想ってるよ。

太陽と地球の、普遍的な関係で良い。
だけどその間、1億4960万km ± 250万kmって。
正直、ちょっとよくわからない。
ただ、確かなことは、そんなに距離はいらないこと。

俺とお前の間の距離は、こぶし2つ分で十分だろ?

 

「・・盲信的に好きってことは、これは執着になるのかな。
あれ?執着から嫉妬は派生するのか?そもそも執着の意味って、何だったっけ」

ぶつぶつ言って、ネットで言葉の意味を調べ出したらしいやつとパソコンの間に割り込んで、
黒ブチメガネを取り上げる。

「ふ、ふじま?」

ド近眼の彼には、これで視界ほぼゼロだろう。成す術はない。

そんな彼に・・俺はゆっくりと口づけをした。

おまえのそういうところ、好きだよ。

真面目な顔でトンでもないこと考えてる、そのぶっ飛んだ発想。

お前が語ると、なんでもアリなんだって、なんでも許されるんだって

この世界や宇宙のこと、思えるから。

面白いんだよ。おまえといると。毎日楽しみで。明日も楽しみになって。

ワクワクするし、ゾクゾクする。

もっと語って。夢を。現実を。宇宙を。


だけど、

 

今夜はもう、ブラックホールのように、余分なことは考えるな。

そんなことしてたら、血が脳にばかり通ってしまうだろ。

 

俺のこと全身で感じるために、全身に巡らせてくれよ。

 

そして、

 

俺だけ、見てろよ。

 

俺のことだけ、考えてろよ。

 

 

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なんと花形は藤真を束縛しなかったー!!
・・という結論。

これでは、タイトルに当てはまってないじゃないか・・・
という批判は受け付けません(ひどっ)。

ふと思ったんだけどこれが人生で初の(公開するのは)花藤!!
・・マニアックだけど明るい花形が書けて良かった。良かった・・のか?とりあえず、花形透は宇宙。
そうしたら、藤真は何かなー?わからない。だけど、たぶん彼はとても幸せ。良かったね!!(何)


<参考文献>

・無意識はいつも君に語りかける(須藤元気)
・人は死なない(矢作直樹)
・シータヒーリング(ヴァイアナ・スタイバル)

<BGM>

・throwing the game(LUCKY BOYS CONFUSION)

13.02.12