ああしくじった。
もう、来年まで見れないのだ。
・・・今や青々とした葉のみになり、風にゆっくりとなぎ倒されてはゆっくりと起き上がっている、
花の片鱗も見取れない状態になったその枝を、恨めしそうに睨んでみても、もう今年は。
先生のお気に入り
『花見?俺、その時期忙しい言うたやん』
講義にもろくに行かず、
親の仕送りに頼りっぱなしでバーテンダーのバイトも辞めてしまったそいつが、
一体何で忙しかったのか・・・は、未だに謎のままだ。
関西のイントネーション。
いつの間にか、違和感も新鮮味も感じなくなっていた。
聞きなれたのだ。その口調は時に移って自分の口から発せられる瞬間すらあって、気恥ずかしい思いを何度もした。
だってもう、なんだかんだで1年。
そう、今年桜を見逃した理由。
腐れ縁の、その男の言ったセリフが原因だった。
・・・でも、オレは考えすぎだったに違いない。
何も、そいつと見なくちゃいけないものじゃなかった。
しかも、花などそいつが見たがらないだろうものだった。
ヘンな遠慮も意地も同情も、もちろん愛情なんて、欠片もいらないはずだったのに。
そういえば1年前あいつと出会ったのも、
こんな風に桜舞散ったあとの微妙な気候と、
中途半端な感情が混ざり合ったなんともない日だった・・・気がする。
・・・まぁ、そんなこんなで出会って1年、
結局、幸か不幸かどちらでもないのか、今年も花見に行くことが叶わなかった。
その、日光に弱そうな西洋人のように青白い肌を晒しながら。
『せっかくここ日陰なのに、なんでそっち?』
『アホ。毛虫落ちてくるかもしれへんやろが。お前も気ぃつけ』
虫嫌いなところは、共通してた。
毛虫が大量に出現する季節であろう、桜の木をよけて、
そいつと二人、転がる大学横のグランドの芝生。
でも、最近は少し、違ったかもしれない。
相手の面倒くさがりさが、面倒臭い、という可愛い言葉では表現できないほど無頓着なものになっていたから。
いつの間にか。一年の、間にか。それとも、始めからだった・・・?
そして、
天気はいいのに、心地よく温かい陽気なのに、何。
オレのこの、腹八分目な気持ちは。
その、心の空腹感を満たすために芝生に這わした手。
目に付いた、引っこ抜いた、その雑草。三枚のハート型した葉っぱ。
そいつを、親指と人差し指で挟んでくるくる回す。
そんなオレのちょっとエキセントリックで幼稚な行動にも、彼はまったく興味を示さず昼寝中。
恨めしくなって、そいつの鼻にその三枚葉をぺとりと沿わせてみた。
・・そいつは小さなくしゃみとともに、寝起きの不機嫌そうな抗議の顔をオレに向けることとなる。
「・・・何するん?」
「ダメ?」
「俺の眠りを妨げるんは重罪やで?自分」
「ひまなんだよ、これ、な〜んだ」
「見やわかるわ普通に・・」
「幸せの葉っぱだ」
「三ツ葉や意味ないやろ。クローバーは四ツ葉やないと」
「・・・そうでもないぞ、ほら」
「四ツ葉だったら、『好き、嫌い、好き、嫌い』。でも、三ツ葉だと・・」
オレは、花占いをしてみせる。
「『好き・・・嫌・・・!』」
その、オレの手に。
葉を一枚ずつ千切るはずだったオレの手に、
さっきまでアクビまみれだった男が、猫のように素早く反応して。
・・・オレの手ごと、最後の2枚を同時に破き去ったのだった。
「『好き・・・嫌い・・・』 ・・『嫌い』 って、続いてもうたな」
そうのたまいながらにやりと薄ら笑いするそいつを、本気で刺してやろうかと思った。
「・・・自分が、そうさせたんだろ」
もう、ひと言でもしゃべりたくなくなった。
面倒くさい。
どうして、言わせてくれなかったのだろう。
ただの花占い。幼稚な戯言遊び。
『好き・・・嫌い・・・好き』。
『好き』、で終わるはずだったのに、
最後の 『好き』 、どれだけ面倒くさくても、言わせて欲しかった。
・・・・眠たげな視界の前を通り過ぎる影。
面倒くさく重たい視線を、
大学生になりさらに顕著に減少した貴重な体力を使って、持ち上げる。本能で。
・・その影は、最初はくっついて見えたけど、
実は散歩をする幸せそうな二つの人型、と気づいて。
彼女の方は、大教室での講義で見かけたことがあった子だ。
へ〜彼氏、なかなかカッコいいじゃん。彼もこの学校の生徒、なのかもしれない。
その、カップルに。
触発されたなんて、そんないいもんじゃないだろに。
考えなしのオレに、思いつかせるものなんて。
『なぁ・・・・ 付き合う ってさ、どういうことだろな』
『・・・・寝、た?』
『寝とります〜』
『起きてんじゃねぇか・・』
『・・・なんでそんなん聞く?』
『理由、いるのか?』
『あ〜まぁええわ・・・そやなぁ・・・俺にもわからへんわ。知らんもんそんなの、なったことないし。
それに、SEXするための口約束みたいでメンドくさいわホンマ。付き合う、って口にすんのも』
『・・・SEXするための口約束』
『おお、そや・・我ながらいい表現やな、100点満点や』
『・・・じゃ、オレらも』
『あ?俺らは約束すらしてないやん・・・好きやねんで、そーいう、メンド臭くないの』
そいつはそーいう男で。
そんなことは前から知ってたけど、
1年経って、改めて思い知らされた感じだった。
それでなんというか、
オレはぼーっとする頭で、これでほんとに おしまい 、って思った。
少しだけ、その頭とダルい体、それに胸の奥のほうに、
モヤモヤや、重苦しい、悔しさや悲しさってやつが、乗っかった、気がした。
だから、
オレは教えなかった。
そいつの、へんてこな着こなしの、
自慢のブランドTシャツに羽織った、真っ白のジャケットの背中に派手に泥がついていたのを。
寝返りを打ったときに見えたんだけど、教えなかった。白着てこんなとこ転がんな、って。
こんなもの、見慣れるようになったオレも、たぶんどうかしてた。
・・・Tシャツにネクタイって、どうよ。個人の自由って・・そうだけどさ、ありなわけ?
『それさ、ビジュアル系の着こなし?それともパンク?』
・・・出会って初めて、ちょうど1年前、やっぱり今見たくへんてこで、
当時そんな奇抜なファッション、見慣れてるはずもなくて。この場所で、オレはそう訊ねて。
そんなオレに彼は、
『・・俺系なんやけど、あえてジャンル言うならロックやな。
アビリルラビーンがやっとんのや。おれ、アビちゃん好きやねん』
それって全然 『俺系』 じゃないじゃん、と思い、
『アビリルラビーン』 じゃなくて 『アヴリルラヴィーン』 だぞ、とも思った。
・・・ああ、そんな一年前からおまえは何も変わらなかった。
変えられなかった。オレがおまえを変えられるなんて思いあがり、最初から持っちゃいなかったけど。
そんな面倒臭そうな信念、抱え込んじゃいなかったけど。
ちょっとは、変えられたら、って、思ったときだって・・・・
でも、結局。
おまえは変わらなかった。
オレが1年の間に唯一おまえに贈ったものすら、
おまえは身に着けなかった。
・・高かったんだぞ、アレ。
なんたら惑星みたいなマークが入ってるってだけで。
おまえが、 『ロックでパンクなもんが好きやねん。ビビアンとか』
って、言うから、『ヴィヴィアンじゃねえの』 と思いながら。
誕生日でも、なんかの記念日でもなかったけど、
おまえの透き通る青白い肌に、あのドぎつい赤のストライプが、良く似合うと思いながら、買ったのに。
渡した時の不快感丸出しの第一声。忘れるか。
面倒臭がりで隣で誰かが犯されようが殺されようが無関心だろう、
オレなんか足元にも及ばないくらい、恐ろしいくらいの不感症のおまえの、
自分に対するその可愛がりよう、拘り。
あーだからアレだろ、あいつって結局、一言で言うと
「ナルシスト」
「あ?」
「なる・・・・なる、なに〜!?」
「わ、ごめん香澄ちゃん・・・今のは真似しちゃだめ〜!」
「え〜!?なんで〜!?もっかいいってよせんせぇひど〜〜いっ!」
「ごめんごめん、先生ぼーっとしちゃってたんだ」
「せんせいダメダメじゃん〜」
・・・・・・・・・・『先生』。
ただの授業の一環でも、
不感症で何ひとつ社会に貢献する部分のないオレでも、この子たちはそう呼んでくれる。
オレの大学での専攻は、似合わなさ過ぎる福祉学部の児童福祉科。
わかりきっていながら何故この学部に入ったのか。
それはこの学校に推薦入学しようとしたら、この学部のこの学科しか推薦枠が残っていなかったから。
・・・実にそれだけで、別に、大層な理由じゃないはずだ。
・・・夏も間近の幼稚園。
必須の、実践活動だ。
本当は2年次の必須科目だったが、欠席3回目で強制的に単位を落とされた。
3年のこの時期に済ませておかないと、これからの就職活動に差し障る。
同じ学年でこれに参加しているのは、2年ですでに単位を取っているのに関わらず
今回も自ら志願して参加の、花形だけだった。物好きなやつだ。
オレなんて、1回でも無理そうだ。
週3回、毎回もう無理だと思いながら、体を引きずって来てるってのに。
そう、
眩しいのだ。眩しくて、苦手なのだ。
子どもたちは、天使だ。光だ。
自分の、影が浮き彫りになる。
この、ドラキュラのような自分には、耐えられないんだ。この光は。
そして日課の校庭での外遊びの付き合い。
日光。たまらないものばかりで。
・・・ドラキュラなオレは、こっそり日陰を求めて逃げ出す。
天井が低い校舎。窓際の日陰。やっとひと安心。ひとつ、小さく小さく息を吐く。
と、
「・・・どうしたの?」
オレの目の前には、
口をへの字に硬く結んで何やらご立腹の様子の、小さくてとても可愛らしい訪問者が。えっと、この子は・・・
「悠子ちゃん?何かあった?」
そう声をかけて自分にできるだけの微笑を総動員し、腰を屈めて視線を合わせようとした。
が、
彼女は、下を向いて両手で小さなこぶしをつくったまま、
弾かれたようにオレの元から走り去って行ってしまった。
「ジェラシーですよ、藤真先生」
2年生の 『彩子』 さん。 本名は知らないけど、みんなそう呼んでる。
「あの、話が飲み込めないんだけど?オレが悠子ちゃんに嫉妬されてるってこと?」
「あ、仙道くんだ」
『彩子』 の、イタズラに笑って指差す方を見る。
仙道。
2年生の彼 『仙道』 は、
ムダにデカい体を腰が痛くなりそうなくらい折り曲げて、
校庭の真ん中でお日様をいっぱいに浴びながら、
いかにも人の良さそうな下がった濃い眉毛と目尻を晒して、子どもたちと戯れていた。
「仙道くん、女殺しだからね〜。年齢問わず」
「ね、仙道が何?それとオレが嫉妬されるのとどーいう?」
「藤真さんニブいな〜、悠子ちゃんは仙道くんのこと好きなんですよ」
「いや、それはあからさまにわかるけど」
「言わせるんですかぁ人が悪い・・・藤真さんは、仙道くんのお気に入りじゃないですか」
「はぁ?」
「『仙道先生のお気に入りの藤真先生』でしょ。だから悠子ちゃん、妬いてるんですよ」
・・・小さい子は、苦手だ。それに女もやっぱ苦手だ。何を考えているのか、わからない。
どこをどう解釈したらオレが仙道のお気に入りに?
第一オレとあいつは、これといった共通点もなく、仲良くないし、そんな絡まない。
それに、あいつはオレのタイプじゃない。
・・・あの、ファッションセンス以外は。
さらさらの、色素の薄くてアッシュなニュアンスの、細い髪。
肌の、青みがかった、透き通るような白。
つるん、とした猫目。一重まぶた。典型的な、日本的な顔。
それに比べて仙道はどうだ。
背がムダに高い、ところしか似ていない。
黒々とした丈夫そうな髪を、剣山にでもなってしまいそうなくらいに逆立てて。
色は白い方なのかもしれないが、ピンクっぽい。
ぱっちりした二重で犬面。現地人もびっくりのラテン系。
ああ、でも。
顔以外は似ているかも。
性格。
そんな、分析できるほどあいつと親しいわけじゃないけど。
万人受けしそうなところ。
が、深く突っ込んだら実は最悪で、何考えてるかわからない、
ナルシストで、つかみ所のなさそうなところ。
あー似てる。
軽い感じの、ところも。
前のあのTシャツネクタイ男も、まさにそうだった。
あ、それに一文字一緒か?
あいつと。名前の最初の一文字・・・ 『あ』
「仙道の名前って」
「『あきら』 です、藤真さん」
「あ」
・・・目の前に張本人が来ているのにも気づかず、
声に出してしまうとは。そのくらい、この日浴びた直射日光は強かったか。
「彰、ですが」
「そう、だな」
「俺の名前が、どうかしました?」
「・・・別に」
「せんせ〜!」
良かった。
日光使いの小さな天使たち、グッドタイミング。
オレとラテン男の謎の会話を終了させてくれた。
返答に困ったオレへの、完全無意識な助け舟。最高。
「せんせ〜!きいて〜」
「ちげ〜よ!おかしいのはおまえだろ、そのみ!」
「おお〜どうしたの、みんなで?」
「たかふみくんやだいちくんが、『おつきあい』 ってゆーのは」
「えっちなことするためにするんだ、って。そーだろ、あきら?」
「もう、せんどうせんせいのことよびすてにするの、やめなさいよ!」
「うるせ〜よゆりえ!」
「『えっちなこと』 って、どんなこと?」
「え〜!りんくんそんなんもしらね〜の〜!?」
「おい、みんなしずかにしろよ!ど〜なんだよあきら、 『つきあう』 ってのは」
なんなんだこの会話は・・・・。
オレはひとり呆れ返っていた。
自分がこのくらいだったときの記憶なんてそんなないけど、
この年でこんなハレンチな口論をしたことなんて、絶対ない。
最近のガキってのは・・・と、年寄りみたいにネチネチ思った。
「うそだぁ!じゃあ 『つきあう』 ってなんだよ」
「・・『つきあう』 っていうのはね・・・おいしいもの食べたときや綺麗なもの、面白いものみたときに、
それを、相手に教えてあげたいってお互い思うこと・・・
そういう、大切で大好きな誰かと・・毎日を一緒にいようってお互いに思ってそうすること・・・なんじゃないかなぁ」
そのセリフ。
ぽかーん、 としている、天使たち。
そして、オレ。
何、語ってんのこいつ。マジになっちゃって。
「なんだよそれ!ぜんっぜんわっかんね〜よ!」
「とにかく!たかふみくんたちがいうみたいに 『えっち』 するためじゃないんでしょ?せんせぇ!」
「ね〜!だから 『えっち』 ってなに〜!?」
「もうりんくんやめてよぉ!」
「あ!はながたせんせいだ!」
「とおるにもきいてみようぜ!」
「だからよびすてやめなさいよぉ!」
・・・・よかった。なんでか知らないけど、オレには聞いてこなくて。
もし聞かれてたらなんて答えるのか。ぞっとする。
だって、オレには言えない。
こんな、都合よく、フェミニストな言葉。
こんな、誰もが一瞬止まってしまう甘く柔らかい言葉。
思い、つかない。
「あ〜・・・やっちゃいました。小さな子たち相手に長々と、つい・・
でも、わかってもらえなかったみたいだな〜、なんでかなぁ」
「難しいよさっきのは。少なくともオレには理解できなかった」
「ウソぉ!・・・かなり噛み砕いたんだけどなぁ。俺、そんな理屈っぽかったです?」
「・・・いんじゃね別に。模範解答なんじゃね?」
「さっきの。本当は」
本当は。
・・・・・・・・・・・『SEXするための口約束みたいでメンドくさいわホンマ。付き合うって』
前の男の冷めた、ファッションセンス最悪の西の口調が脳裏にぶり返して。
今、目の前にいる仙道。あいつと性格の、似ているだろう男。
ハタチを過ぎた軽い男の、天使たちを騙す、出来過ぎた浅知恵。
「『本当は』?」
「・・・本当はおまえだって・・・・思ってんだろ?
『付き合う』 なんて・・・『SEXするための口約束』 って・・・」
「そうなんですか?」
「オレは・・・そう思ってる。おまえだって・・・」
「それ、誰の入れ知恵です?」
「え」
「あなたは、そんな風には思ってないはずだ」
「な、んで」
「なんとなく、かな」
「・・・なんだよ、それ」
「でも、当たってる。でしょ?」
「そん、なこと」
「ね、さっきのあの子たちの前で言ったの、俺の本音ですけど。ヘン、でした?」
「うそ」
「うそじゃないですよ・・『つきあう』 って、
大切で大好きな誰かと・・一緒にいようってお互い思うことだと、俺は」
「キレイですか?そうかな〜、結構過酷だと思うけど。そこに辿りつくまで」
「何が」
「だって片方じゃいけないんですよ。
『お互いに』 大切で大好きじゃないと、付き合えないんですから。
もし片方でいいなら・・・俺と藤真さん、とっくに付き合ってますよ」
・・・・・・・・・・何を。
この男は、少し照れくさそうにしながら、一体何を。
男臭いルックスにちっとも似合わない、乙女チックなことを。
・・・聞き、違えたんだろうかオレは。
さっきまで浴びていた、直射日光のせいだろうか。
ああ、熱い。もう、おかしい。おれも、こいつも、おかしい。
目頭まで・・・熱くなるなんて。
「ちょ・・・藤真さん?」
「なんで もない、ただちょっと目が・・・砂が・・・」
「・・泣くとこじゃないですよね?」
「泣 いてねぇよ・・」
「あああ〜〜!!!あきら〜!!!」
「せんどうせんせいいけないんだいけないんだ!ふじませんせいなかしてる〜!」
「せ〜んせいにいってやろ〜!」
「ばか!せんどうせんせいがせんせいだろ!」
「じゃ〜あやこせんせいにいうもん!」
「え!?ちょっと待ってよみんな・・・泣きやんでくださいよ藤真さん〜」
「み んな!泣いてないよ先生・・ほら」
「・・・やっぱないてんじゃん!」
「なかした〜せんどうせんせいがふじませんせいを〜!」
「ふじませんせいだいじょうぶ?なにされたの?」
「わかった!えっちなことされたんだ!」
「そうなのふじませんせ〜!せんどうせんせいさいて〜!!」
「したのかよあきら!」
「えっ!?俺は何もしてないよ!ほんとさ!」
「・・・わかった!せんどうせんせいはふじませんせいがすきなんだ!」
「るいのばか!すきなのになんでいじめるんだよっ!」
「そんなんわかんないの〜?やっぱたかふみくん、こどもね〜」
「なんだとっ!?なつき、てめ〜!」
「こらこら!みんな、やめなさい!」
「あきらのいうことなんてきかね〜もん!ふじまなかしたくせに!」
「うっ」
「・・・みんな!急に泣いちゃって悪かったよ、
仙道先生は悪くないんだ・・・もう、先生泣いてないから。平気だから、ホラ、この通り!」
最近作ることさえ忘れていた笑顔をひっつめた表情で作り、
涙目のままの顔を上げると、
鉄棒の所から、仙道好きの悠子ちゃんの、鋭い視線を感じた。
・・・ごめん、悠子ちゃん。
先生、もうやめらんない。
『 私は先生のお気に入り・・・いつもかまわれているの
みんながふざけてウワサをしてた
からかい半分のやきもちで
言いたいように言わせておくのうんざりするまではね 』
小さなか弱い女の子相手に大人げないって言われたって、
もうこのポジションは譲れない。
・・・・オレは、仙道先生のお気に入り。
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<<参考文献・BGM>>
*小島麻由実・・・・・・・・・・・『先生のお気に入り』
*Rie fu・・・・・・・・・・・・・・・・『Life
is Like a Boat』、『decay』
*BUMP OF CHICKEN・・・・『ラフ・メイカー』
*B`z・・・・・・・・・・・・・・・・・『愛のバクダン』
アヴィリルラヴィーンのポスター。ヴィヴィアンのHP。BLEACH。NANA。スクールランブルの播磨のセリフ。
2回目の 『海猿』。カシスのカクテルキャンドル。
ランコムのミラク。掃除によって一年ぶりにウンガロのポシェットから出てきたサムライ・ウーマン。
気遣いのスタバ、キャラメルフラペチーノ。きのうのお別れ。金城H頭。
鶴M公園での花見。来ていたあの長身ベビーフェイス。