湘北高校1年の流川楓は、今さらだが図太いを通り越して、鈍い人間だ。
どのくらい鈍いのかというと、決勝戦の日でも寝坊して遅刻するようなやつなのだ。
無神経で、おまけに無表情。
(・・と、上で列記したものは中学から同じ学校である、
湘北バスケ部のマネージャーA子の証言による)
だが、そんな流川でも妙に鋭くなる時がある。
それは、バスケに関することと、あともう1つ・・・。
今回の話は、そのあともう1つに関するものだ。
まずはその妙に鋭くなった流川が、事態の発生に気付いたところから火蓋が切られた。
(何故気付いたのかは、大人の事情で割愛させていただく)
神奈川オールスターの合宿最後の夜。
施設の玄関を出た植え込み辺りで、絵的に不釣り合いな2人が対峙していた。
「何かね、こんなところに私を呼びだして。安西先生には、相談し辛いことなのかな?流川君」
「何かね・・だと?どうして呼び出されたか、わかってんだろ、てめーはよ」
「おっと!すごい口のきき方だ。安西先生は一体どんな教育をされているのやら」
「先生は関係ねーだろ!じじー!」
「今夜はよく喋るなぁ!こんなに喋る君を初めて見たよ。明日は雨が降るかな?」
「・・トボけてんじゃねーぞ!!」
流川は、今にも相手に掴みかかりそうな勢いだ。
だが意外にも掴みかかられそうになっている側の中年のオヤジは、とことん冷静であった。
否、冷静というよりむしろ、流川を小馬鹿して挑発している様子すら伺える。
その理由に、彼は脂ぎった顔にかけている暑苦しいメガネの奥の瞳で、薄く笑っていた。
「落ち着きたまえ流川君。この合宿中、君のプレイを近くで見せてもらったよ。
君は、本当に良いプレイヤーだな。そのオフェンス力、ずば抜けた身体能力、負けん気の強さ!
だが・・・バスケを離れてしまえば、君の取り柄は何かね?」
「何だと?」
「君の取り柄は何か、と聞いている。顔の良さか?足の長さか?
ただガムシャラに押しの一手で、そんなことで抜けると思っているのか?甘いな」
「・・・てめー、殺されてーのか!」
「おお!そうやって年下の武器の強引さで押し倒せば、あいつをモノにできるとでも思ったか?
確かにあいつは後輩を可愛がる、おまけに面倒見が良く情に厚いやつだ。
だがな、さすがにやって良い事と悪いことがあるぞ」
「何のことを言ってる?」
「・・聞いたぞ。彼に迫ったらしいじゃないか。もっとも、君は相手にもしてもらえなかった・・
肩の力抜けよ。若いとは、何とも痛々しいものよのぅ」
「・・もう、許さねー!!」
***************************
陵南高校2年の仙道彰は、今さらだが随分とマイペースな人間だ。
湘北高校1年の流川楓と並んで、気まぐれ二大巨頭のエースとされている。
もっとも、仙道は流川よりは常識があると思われているし、
精神的に随分大人だと言われているし、実際にそうなのだろうが
流川が知らないで、無意識に赤子のごとく常識を破るのに対して
仙道は知っている上で意識的、つまり故意にかつ気まぐれで常識を破るので
両者はその意味ではタイプが違う。
・・ちなみにどちらかが始末が悪いのかは、わからない(きっとどちらも悪いのだろう)。
とにかく仙道は、学校生活や部活といった、公衆の面前でも垣間見せるマイペースさを
プライベートではさらに顕著に大爆発させている人間だ。いつもフワフワしている。
彼の辞書には、束縛や執着といった文字は微塵もない。
だが、そんな仙道でも束縛や執着をみせてしまう時がある。
それは、勝負に関することと、あともう1つ・・・。
「あー、そろそろ戻るかな」
合宿施設をためらいもなく抜け出し近くの海岸まで来ていた仙道は
1つ伸びをして首と肩をコキコキ鳴らすと、帰路をのたのたと歩き出した。
・・先ほどチェックした携帯には、
(どうやら付き合っていることになっている)同じ高校の1つ年上の女子からの返信催促メールと、
(何故かそういう関係に陥ってしまった)9歳年上のセレブ新妻からの食事の誘いメールと、
(どういう訳か手を出してしまい、それから付き纏われている)1つ年下の他校の女子からの
鬼のような数の着信が残っていたが。
彼はそれらをほぼ意に介さず、まったく別の人物のことを考えていた。
あの人と今夜・・話せると、思ったのに・・・捕まえるつもりだったのに・・・
目的の彼は、どういう訳かどこにも見当たらなかったのだ。
話がしたい。滅多にないチャンスなのに・・・。
・・・ごちゃごちゃヨコシマな雑念を抱きながら玄関前の急こう配を上がって行くと、
そこには意外な人物2人が対峙していた。流川と・・あと1人は。
「げ。ちょっと、なにコレどういう事・・」
仙道はマイペースであっても、その場の空気を読むのには長けている。
否、長けていなくても、この場が一触即発なのは誰にでもわかるが。
もっとも、今にも即発か爆発かしそうなのは流川1人で、あともう1人は涼しい顔をしているのだが。
「流川!」
「・・・!センドー」
「おお!仙道君じゃないか」
「おお、じゃないですよ。何かあったんですか?」
「どうもこうもないよ。流川君が私に相談したいことがあるというのでわざわざ出てきたのだが」
「流川が、相談?」
「ちげー馬鹿か!!そんなんじゃねー!!」
「おまえ、どうしたんだよそんなにカッカしちまって」
「どうだね。随分な態度だろ?人を呼びだしといてずっとこんな調子なんだよこの流川君は」
「もとはと言えばてめーが!あの人を!藤真さんを!!」
「藤真さん?」
意外な人物の名前が出たことに、仙道は目を丸くした。
もっとも、仙道がさっきまで(しこたまいる女子たちを差し置いて)海岸でずっと考えていたのは、
他でもない藤真のことだったのだ。
「藤真さんが、どうかしたの?流川」
その仙道の投げかけに、流川は唇を悔しそうにギリッと噛んだだけで答えず、
代わりに流川と対峙していたその人物が、
持っていた扇子を広げ、満足気に仰ぎながら高らかに笑いだした。
立派な鼻の穴が膨らませ、青いヒゲを突き出して。
その気色悪い姿に、普段感情をあまり表に出さない仙道も思わず顔をしかめる。
「はははは・・・はははは・・・はっはっはっは!!」
「監督、どうされたんです・・・?」
「ちょうど良い機会だから君にも教えてあげるよ、仙道君。
取っ掛かりに君のその頭だけど・・まるでハリねずみの針だし、亀の甲羅のようだね」
「・・は?」
「余裕があるように見せているだけで、実はそんなに器大きくないよな、君ぃ。
本当はプライドが高く繊細で神経質。その髪の毛は、そんな心理の現れなんだよ。
実は臆病な内面を悟られないために、自分を守るために、頭を逆立てている。サボテンみたいにな」
「はぁ?」
何言ってんだこのおっさん・・・と蔑みを含んだ目で、仙道はその人物を見た。
「私が何を言っているのか、わからんか?
本当にわからんのか、わからんふりをしているのか・・どっちだね?君は、曲者だからな」
「・・何のことか、話がさっぱり見えません」
「ほほぅ。ではもう少し噛み砕いて教えてやろう。君はひどく異性にモテるようだが、
それでもまったく満足しているようにみえない。当たり前だがね。
何故なら、本当に手に入れたい人間を手に入れていないからだ」
「なっ・・・!」
「・・簡単にあいつが落ちると、思ったか?
それとも、もう落ちてると高を括っていて、
あとはいつ手中に収めるか、どう収めるか、嬉々と考えを巡らせていたところかな?」
「・・一体、何のことです?」
「しらばっくれるな。確かにあいつも始め君のことを気に入っていたようだがね。
だが・・その位置にいつまでも居座れると思うとは、やはり君もまだまだ甘いな。
せっかく自分の優位に気付いたのなら、そこはプライドとか格好つけとか全部捨ててでも
すぐに踏み込むべきところだったんだ!・・それなのに大事な勝負の見極め時がわからんとは、
いくら恋愛で場数を踏んでいる君でも、やはりまだまだ・・・甘ちゃんなんだよ!」
「・・・何、言ってんだあんた」
「おお!仙道君まで私に向かってあんたとは。田岡さんも生徒への教育がなっとらんな」
「話をそらすなよ。さっきから、誰のことを言っている」
「・・私に言わせるのか?聞きたいなら言ってやっても良いが、
少々残酷ではないかと思ってな。選手想いの私には辛い選択だ。
だが・・・あえて言おう。頭を冷やしてよく聞けよ。
モテるといっても所詮、君もまだ17歳だろ?
粋も甘いも知り尽くすには、10年早い!」
「何だと・・?」
「藤真サンが」
ここで、黙っていた流川が急に口を開いた。
「あ、そうだ、流川!藤真さんが何!?」
「藤真サンが、こいつと、デキてる」
流川のその真剣な言葉に、仙道は一瞬目の前が真っ白になった。
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海南大附属高校3年の牧紳一は、今さらだが顔に似合わず天然ボケだ。
筋骨隆々のルックスに、帝王の名に恥じない貫録を持ち合わせてはいるが
バスケ以外では、皆が閉口する程頭の中がお花畑になっていることも少なくない。
そして、そんな牧がさらに頭に乙女色全開にお花を開花させてしまう時がある。
それは彼が、ただ1人の人物の事を考えた時・・・。
「あいつは一体、どこにいったのか・・」
読んでいた本から顔を上げて、読書や勉強の時にのみかけているメガネを外す。
牧の心の声は、現実に発せられていた。
消灯時間が迫った今、同室の藤真の姿はない。
今夜は、藤真と公の場で過ごす、高校最後の夜になるかと思い
互いに眠気が襲ってくるまで、あれこれ語り尽くそうと考えていたのに。
そして・・公の場ではこれが最後になるかもしれないが
これを機に・・・因縁のライバルと言われる2人の関係はそれはそれとして置いといて
それ以外の関係を・・もっと甘い何かを・・・築くことができればいいと思っていた。
――そう、海南大附属高校3年の牧紳一・・彼は、
翔陽高校3年の藤真健司に、惚れていた。
ところで、藤真がこの時間にこの場にいないのは、変である。
今まで藤真と合宿を度々共にしてきた牧にはわかるのだ。
藤真は、規則にとてもうるさい。自分から破ったりはしないだろう。何か、あったのだろうか。
「ん?」
・・何やら外が騒がしい気がして窓を覗いた。ここは2階だ。
その牧の目に、異質な光景が飛び込んできた。
「何だあれは・・?」
玄関の植え込み付近で、男3人が対峙している。
それが全員、意外な人物で。
何やら言い争っているようだ。何かがおかしい何かが。
とにかく・・・駆けつけなければならない!
そう思うが早いか、牧は階段を駆け下りていた。
高頭が張りあげる声が、ロビーにまで聞こえている。
「・・・湘北のエースは、真っ赤な情熱を持っているかと思いきや、単に血の気が多いだけ!
陵南のエースは潔癖な青で冷静沈着かと思いきや、それも見かけ倒しで中身はただの青二才!!
赤も青も混ぜ込んだ紫、我らが海南が何につけても常勝なのだよ!!!はっはっは!!」
常勝・・!?なんだ?バスケの話をしているのか?
それにしては、様子がおかしすぎる。
「監督!!」
「おお!牧か」
「牧さん!!」
「じぃ!」
「ついに、役者が揃ったな。常勝の紫・我が海南のエースよ。
だが、それもバスケに置いての話限定だがな」
そう言って、ひとりだけ事態をわかっているらしい顔のでかい中年男は、にやりと笑った。
そう、流川・仙道と対峙していたのは、
牧の通う海南大附属高校の監督である、高頭力であった。
・・絵的に不思議な、三つ巴ならぬ四つ巴の出来あがりである。
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「おまえら・・・どういうことだ!?何があった!?」
流川の意味も解らずふてくされた態度も随分意外だったが、
それより仙道のイライラした、憎しみ剥き出しの様子を牧は初めてみた。
歯ぎしりが聞こえてきそうなくらいに口元を噛みしめて
普段は人が良さそうに垂れ気味の、眉毛と目元を険しく釣りあがらせている。
これは・・・気圧されるくらいに人相が変わってしまっている。
そして、それを嘲笑っている母校の監督・・・。
何とも異様な光景だ。
「高頭監督、これは一体どういうことですか?」
「牧、私は被害者なんだよ。2人とも、この通り今にも掴みかかってきそうな剣幕でね。
湘北も陵南も、選手の柄が悪いと思わないか?」
「うっせーじじー!!」
「おい流川!!監督に向かってなんて口の利き方だ!」
「牧さん!こいつは腐ってますよ!!」
「仙道!?おまえまで何てことを言うんだ!!」
「牧、助けてくれ。こいつら、おかしいんだ」
高頭は、可笑しいのに耐えられないように笑いながら言う。
「おかしいのは、てめーの方だろ!!」
「牧さん!!この高頭監督は藤真さんと」
「藤真?」
牧もまた、さっきまで考えていた人物の名前を出されてはっとした。
「藤真が、どうしたんだ」
「藤真サンがっ」
「こんな時間になっても部屋に戻ってないんだ。おまえら行先を知ってるのか?」
「・・行先なら、この高頭監督がよくご存じだと思いますよ」
仙道が、吐き捨てるように言った。
「?監督が?藤真は一体どこに?」
「牧よ・・おまえに事実を告げるのは辛いが、
しかし時には可愛い選手の成長を願えばこそ、言わねばならんのだろうな」
「は?」
「藤真なら、私の部屋にいる」
「え?それはどういう?あ、・・・あいつも翔陽の監督だから・・
監督同士で、何か相談でもされていたのですか?」
牧の問いに高頭は、大袈裟に頭を抱えてわざとらしく溜め息をついた。
「牧ぃ・・・おまえは本当にバスケ以外の事は信じられないくらい鈍いな。
そんなことだから、3年間実直に想い続けても藤真に少しもふり向いてもらえんのだぞ」
「!?・・一体何を・・・おっしゃるんですか!?」
「今さら隠すな。私に隠し通せるとでも思っていたか?
もっとも、おまえはわかりやすすぎるがな。私でなくともおまえの気持ちには簡単に気付くだろう」
牧が仙道を見ると、仙道は大きく頷いた。
そしてなんと・・・流川まで半ば呆れているように頷いているではないか!!
牧は、自分の気持ちを周りに知られていたことに驚き、見る見るうちに赤面した。
・・一方、動揺しだした牧を尻目に、仙道は再び高頭相手に激した。
「そんな牧さんの・・教え子の健気な気持ちをわかっていながら、
あんたは藤真さんに手を出して、汚したんだ!
・・他校とはいえ生徒!未成年!!牧さん!こいつは鬼畜ですよ!!」
「は?仙道、何言って・・・・・・・・・」
牧は、自らの羞恥もあいまって思考が全然追いついていかない。
そんな牧を、高頭は扇子を仰ぎながら満足そうに眺めている。
すると今までほぼ黙っていた流川が突然、
「だから、このじじーは、藤真サンとヤった」
と発した。
「・・ヤッた?」
バスケの話では、なさそうだ。
さらにこの上なく混じり気のない言葉で、教えてくれた。 「せっくす」
流川のその直接的な言葉に、牧は一瞬の内に気が遠のいた。
***************************
「はっはっはっは!!」
牧の遠のく思考を、高頭の笑い声が現実に押し戻す。
いっそ、そのまま気を失いたかったのに。
「おまえら誤解しているみたいだから言っておくが、誘ったのは藤真の方だぞ」
「「「なっ・・・!!!!」」」
「まぁ頭冷やして、話を聞け」
「・・嘘だ!!嘘に決まってる!!きっと何か
藤真さんの弱みを握って・・!要求を拒めないようにして!」
「無理矢理ヤったんだろ!?」
「流川、おまえと一緒にするなよ。もっとも、
ガードの固い藤真の前に未遂もさせてもらえなかったようだが」
「流川!?おまえ・・藤真を襲ったのか!?」
「牧さん!未遂って言ってたから大丈夫!今はそれにキレてる場合じゃないですよ!!」
「はっはっは!!小競り合いを。3人束になってこようが私の敵ではないんだよ」
「くそっ・・・何でだ!?藤真さんが、こんなやつに・・理由が少しもわからない!!」
「おまえらは所詮まだ、高校生だからな。いいだろう、少し早いが教えておいてやる。
・・大事なのは愛の技と、見せかけでない余裕と、車だ!!」
「愛の技・・・余裕と・・・車!!??」
牧は、普段高頭がまったく似合わない高級外車の黒のジャガーを
颯爽と乗り回していることを思い出した。
「おまえらも、あと10年経てばわかるさ!!」
「・・・藤真サンがそんなチンケなモンに釣られるワケねー!!」
「はん、だから甘いんだ若造が!チンケだと?
三種の神器を!!まぁ、今はわかるわけあるまいがな。
いいか!これらをもってすればこの私に手に入れられないものはない!!
例え冷たい目で、やたら賢(さか)しげ、かなり手ごわそうな相手でさえ・・そう、まさに藤真のような」
「サカシゲ?って何」
と、不機嫌流川。
「知らん」
と、きっぱり牧。
「おまえはうちの大学には受験がないからと言って勉強に手を抜きすぎなのではないか?」
と、呆れ高頭。
「・・”賢しい”=”才知がすぐれ判断力があるさま。かしこい。賢明である。気丈である”」
と、基本呑気なのに出るとこ素早い仙道が、スマートフォンで調べて答える。
なるほど!!意味がわかって3人でスッキリ!
・・・じゃなくて!!
「まさかこんなところに伏兵が・・・ライバルがいたとは!!」
「ライバル?・・ちゃんちゃらおかしなことを言うな。笑止!!」
「何!?」
「おまえらをライバル等と、思ってはおらん。私の敵ではないからだ!レベルが違うんだよ!!」
「何だって!?」
「・・確かにおまえらには人に好かれる要素がある。バスケの才能と、その端正な容姿だ。
だが・・真のモテる大人の男とは、生身のトライ&エラーによるキャリアから作られるのみ!!
私は昔から、その努力を怠ったことはない!!そして今では老若男女、私のものだ!」
「もっともらしいことを言いやがる・・」
「美女と野獣・・・」
流川が、珍しくうまいことを言ったように思えたが。
「流川、藤真さんは女じゃないよ」
仙道がすかさず突っ込む
「知ってる」
「藤真さんような綺麗な人が、何故こんな醜い中年と・・・」
「まっっったくわからん!!!」
牧が激しくかぶりを振って苦悩する。
「馬鹿だな。自分自身完璧に美しい人間が、さらに他で美を求めると思うか?」
「え・・求める人もいるのでは?」
「藤真は、ルックスで人を見限る様な浅はかな人間ではない」
「あっ!藤真さんってやっぱりそうですよね。彼、中身見てますよね。
俺、ルックスとバスケだけでキャーキャー言われることが多くて。
でも藤真さんは俺の本質を気に入ってくれてる気がしてた。そこが良かったのになぁ」
仙道が、通常時なら鼻もちならないことをさらっとのたまう。
「どあほう、同意してる場合か!!」
「はっ!つい!しかしおまえに突っ込まれるなんてレアだな!」
「仙道!!感心してる場合でもないぞ!!」
「・・とにかく藤真のように賢しい、言わばツンデレなタイプの方が
落とした時にはベタベタに甘えてきて、可愛いくてたまらんな」
「ツンデレ・・・」 「あのくらいレベルの高い相手でも・・・私にかかれば夜には腕の中さ!!」
「腕の中・・・!?」
「藤真は意外にもヒゲフェチでな。私が頬ずりしてやると溜まらなく恍惚とした顔を見せるぞ」
「うっ・・・」
「・・・気持ち悪ぃ・・・」
全員、体中一気に鳥肌が立つ。
「♪楽勝ー!常勝ー!!私にかかれば!!」
それを余所に高頭が、歌うように無駄に良い声を張り上げる。
「ちょ・・ちょっと待ってください監督!!やっぱり、そんなことあり得ません!
「なんだ牧、往生際の悪いやつだな」
「あり得ません。何故なら、監督はご結婚されているからです」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・(あっ、このおっさん奥さんいるんだふーん)・・」
「・・・・・(しーん)・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ふーん。それが?」
「”それが”!?とは!?」
「牧・・・そんなものは、関係ないのだ」
「関係ないとは!?民法上の不貞行為ですよ!?」
「おまえは、”賢しい”は知らないのに法律はわかるんだな」
「自分は国語は苦手ですが、公民は得意です!納得できません」
「ほほぅ・・おまえが納得できない気持ちもよくわかる。
だが、その狭い視野の中で物事をすべてわかろうと等するなよ。
法律だって、所詮人間が作ったものなんだからな」
「・・何という事を!!」
「おまえはそんなナリをして、役職持ちのサラリーマンみたいなツラしているが
所詮は17歳だろ?・・老け顔も大概にしろよ」
「なっ・・・!!」
「さすがにひでぇ・・・」
「自分の努力ではどうにもできないことを!!教育者が言っていいのか!?」
「この前こいつは私といたとき、他校の教師陣に同僚と勘違いされたのだぞ」
「・・・それは何と言うか・・お気の毒に。牧さん・・気を確かに・・」
「カワイソウ・・・・」
さすがに仙道・流川両者の同情を買ったようだった。
だが、牧にしてみればそんなものはどうでもよく、とにかくショックすぎて、涙目だった。
頑張って、忘れようとしていたのに!!ここで、その話を蒸し返さなくてもいいのに!!
だがだが、自分の容姿に(今さら)ショックを受けている場合でもない。
「だいたいおまえは、外見と同じで普段から頭が固いというか、融通が利かないんだ。
・・聞いたぞ。先日学校で情報の授業の際、立ちあげたパソコンがウイルスに感染していて
教師が”すぐにLANを抜きなさい”と言っているのにも関わらず
”何故このパソコンはウイルスに感染してしまったのか”を考え込んでいたらしいな。
まったく・・・バスケのことには、柔軟なくせに、あとはガチガチのロジカル人間め。
それでは藤真も、満足しなかろう。一緒にいても、面白味もない男だ」
「・・・何故そのことを知っているのです!?」
「情報の松宮くんとは、親しくしていてね・・言わば大人の関係だよ」
「情報の・・松宮先生と!?」
情報の教師、松宮とは30手前の女教師で大変色っぽく、
生徒はおろか教師陣にも人気の高いグラマーな人物だ。
「お、大人の関係とは!?」
「・・遊びも本気も、マジメも淫らも・・私くらいになると、まとめてお相手できるのさ!!」 まさか、松宮まで高頭のお手付きとは・・・。
「・・・わ!わかりません!!!自分には全然わかりません!!」
「わからぬまい・・無理もない。大人の恋には、キャリアが必要だからな」
「・・松宮先生も・・藤真も・・何故、何故こんなことに!?
とにかく藤真はどこです!?彼に会わせてください!!
本人の口から聞き出さねばなりません!!何故こんなことになったのか!!」
「往生際の悪いやつめ。本人を呼んできたところで、既成事実は変わらんのだよ。
・・おまえは目の前で人が倒れた時も、救命もせず
まず第一に何故倒れたのかを状況分析しだしそうなやつだな」
「あ~、牧さんそういうところありますよね」
「だろ?」
「仙道!!!!」
「あっ、すんません!つい乗っちまった・・何故?」
「はっはっは!!見たか!!これが話術だ!!
高頭マジック!!高頭ゾーン!!おまえらとの、キャリアの違いさ!!」
「くっ・・・」
「わかったか!?私が、世界を独り占めなのだ!!皆の者、サーンキュー!!!
♪楽勝ー!常勝ー!!私にかかれば!!」
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恐るべし智将・高頭力。
彼の道徳に関する思慮の浅さは差し引いても
その可能性は、バスケに置いても大人の恋に置いても、まだまだ未知数である。
とにかく、この夜の出来事が神奈川オールスター3人の今後の恋愛観に
絶大な影響力を持ったことは間違いないわけで。
・・・純粋なのか安直なのか、おそらくその両方なのであろう牧に至っては
高頭の言う三種の神器・・・愛の技・・・余裕・・・車・・・を信じた。
当然ながらその中で金で手に入るのは、車のみであったので、
18歳になるとまず免許を取り、高級外車である緑のボルボV70を購入した。
(両親に買ってもらった。さすが金持ち)
緑色は、翔陽カラー。もちろん藤真を意識してのものだ。
その助手席に、藤真が乗ることは果たしてあるのか!?
次回、乞うご期待!!
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2013.04.01
乞うご期待なんて言ってますが、続きません。
BGMは、ユニコーンの服部で決め!!
服部はすごい男でみんな虜になってしまうダンディズム!!
男にも女にも憧れの無敵艦隊!!
これが高頭だったら・・・そして藤真が!!高×藤!!高野じゃないよ!高頭!!
・・・エイプリルフールだから、このくらいのこと許されるでしょう!!
こんな悪い冗談、いつやるのか。今でしょう!!
(お手数ですが、ブラウザでお戻り願います)
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