ミーティング開始十数分前。

その所以、いつもは誰かしらいる部室に部員の姿はなかった。

もう、ミーティングの行われる4号館3階の大教室に移動したのだろう。

軽音楽部は部室の向かいに、物置として使っている小さな部屋を持っている。

ベース統括キャプテンで、この部屋の管理者である俺は、ここの鍵を持っている。

・・・そして俺はここまで、藤真さんを引きずってきたのだった。

 

 

外開きのドアを勢いよく開け放つと、薄暗く狭い室内に彼を押し入れる。

彼は小さい悲鳴を上げて、床に転がりかけた。

そんな彼の手首を引っ張って強引に立たせる。

その痛みに端整な、清楚な顔が、オレの残虐心を撫で上げるように・・

・・まるで計算されたかのように扇情的にしかめられるのを見ながら、俺は後ろ手に鍵を閉めた。

 

 

 

 

「痛っ・・・神!?もうミーティング始まるぞ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

そんなことはわかってる。

わかってるけど、押さえられない感情がある。

それがまるで理解できないらしい、なんだかんだで優等生の藤真さんが、困惑してる。

・・彼のそんな様子が、さらに俺をイラ立たせる。

俺よりミーティングの方が。

俺より、さっきのあの男の方が・・・??

実験棟から見えたあなた。会ったばかりだろう男の話に、笑顔で答えていあなた。

 

・・・ただそれだけ、に、俺は酷いヤケドを負った。

それを見たとき、心に一気に吹き出た、氷点下の感情。

心臓が凍りつくくらい、の嫉妬をしたんだ、俺は。

この、全身凍りつきそうな憎悪。恐怖。残虐心・・そして込み上げる愛しさ。

・・あなたにも、わからせてあげましょうか?
 

 

 

 







 

殺しにきたぜ I LOVE YOU

パイナップルサンド

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・どうしたの、おまえベースキャプテンなんっ・・・んんん」

狭い室内、彼を壁に押し付けて強引に口づける。

彼を拘束し、ねっとりとした、舌や唾液まですべてからめとるような、息の止まるような長い・・・

・・・この感覚には覚えがある。

初めて彼と、練習室で交わしたくちづけも、こんな風だった。

 

 

 

「ん・・・・っはっ!・・・・・は、はぁ」

壁に押し付けながらの深い口づけ、から一時だけ彼を解放し、観察するように彼を凝視する。

この状況を客観的に見たら、追い詰められている彼と、
残酷な性欲に突き動かされている無表情の俺・・だろう。

儚くも押される、辱められる可哀相な彼と、手加減もなしに押し出す、辱める残虐な俺。

今回だけじゃない、いつ、何時でも。

あなた自身も、そう思っているんでしょう?いつも何時も、苛められたいあなたは。



・・でも、それは違うんだ。

それは 『M』 のあなたが、勝手に俺に張った、理想の恋人像・・でっち上げの 『S』 というレッテルだ。

いつもあなたを愛するその気持ちに、息苦しいくらいに、
追い詰められて追い詰められて、どうしようもなくてする反抗が、この行為なんだと・・

いつも俺をサディスティックに豹変させるのは・・
俺をいたぶってるのは、あなた自身なんだと・・気づいてくださいよ。



 

痛々しいくらいに拘束した腕には、
激しいドラムの音からは想像できないくらいの華奢な手首には、すでに赤い跡がくっきり残っていた。

「ん・・神いまはダメだよ、も、行かなきゃ・・・」

瞳を潤ませながら、艶が出かかっている声を隠しながら、必死に俺の胸元をその細腕で押し返してくる。

しかし力が入れられないらしく、余計扇情的にしか感じられない儚い抵抗だ。

俺は心の片隅で、本気で抵抗してみろ、って思う。

この人はときどき、俺の神経を恐ろしいくらいに逆撫でしてくれる。

この人ほど、俺が支配したいと思った人間が、今までいただろうか。

犯したくて、そのことしか考えられなくて、頭がおかしくなってしまいそうなくらいの。

「あっ・・や、めて!神まって・・・・やっ!」

俺は彼の耳の裏から首筋を舐め上げながら、早急な動きで下着までを剥ぎ取った。

 

 

そして自分の服も、羽織ったままだった白衣もくつろげた程度に、

 

「や・・・や めて やめて!神、お願 いっだから」

「・・うるさい」

可愛いあなたのお願い、なら。いつもなら、できるなら聞いてあげたいけど。でも、今は。

「やっ何・・・・やだ、やだ・・・・あ、あああああ――――――!!」

「くっ・・!」

 

そして立ったまま、反り返り膨張した自らのペニスを藤真さんのソコにあてがい、

彼の狭い体内を一気に貫いた。

 


 




 



「あっ痛・・!痛い・・壊 れちゃ う・・抜い てっ」

下から突き上げてくるものから逃げようと、

ずり上がろうとしてくる彼の体を有無を言わせない力で拘束し、

慣らしもせずに手加減なしに揺さぶってやる。

ペニスを根元まで咥えられたまま、食いちぎられそうだ。
そのくらい、痛いくらい彼の中は締まってる。

藤真さんはお人形みたいに大きな目を見開いたまま、
突然の挿入のショックに生理的に流れ出る涙を止められないでいる。

・・この媚態だけで、簡単にイってしまいそうになる。

あなたの形のよい眉が歪み、俺を受け入れたことで苦痛の表情を浮かべる。
俺に犯されて彼がする表情。すべて愛しい。

・・・あなたは俺のためだけに、俺のせいだけで苦しめばいい。


「あああっ!・・・じ・・ん・・もっ、何 でこ んな・・?ゆる・・してっ!」
「許・・・せ ないです」
「いや んっ、んっあっ も、しか して、んっ土 屋・・あああっ!!」
「・・もう、絶 対許さないですよ・・・藤真さん」

・・さっきからずっと頭をもたげていた男の名前。

それを打ち消す為に、藤真さんの首に、浮かび上がる動脈に噛み付いた。

首筋、鎖骨への激しい愛撫に、
弾き飛んだ彼のシャツのボタンが、俺を責めるように視界の淵を掠めていく。

密室には体温を上げた二人の体から発散する汗で、同じ香水の香りが二人分、充満しだした。

いつもは爽やかなはずのこの柑橘系の匂いに、今は悪酔いしそうだ。


「俺に抱かれながら、突っ込まれてよがりながら・・他の男の名前なんてよく呼べますね」

「違!っああっ!・・・ちが」

「何が違うんですか・・セックスなんて、やり方も知らないような無垢な顔して、
・・・いったい今まで何人誘って、喰っ てきたんです・・か?・・いやらしい」

「!そ・・んなこと・・あっ・・ない・・!」

「実はこんなに好きモノで・・淫乱なんですものね・・ほら、こことか」

「・・あ!あん!」
・・まだ着ている彼のシャツの上から、手のひらに引っかかる突起をかすめてやる。

「弱いですよねここ。服の上からしただけなのに・・
とくに左は弄られるの大好きでしょう?・・ほら、いつもみたいに舐めてほしいんでしょ?」

「そ、んなこと・・・・・あ!」

「言えよ・・してほしいって・・俺にされていつもヨガってるくせに・・」

「や、だ!イジ ワル、し・・・ないで・・あっ お願・・いだか ら」

「言わないと、なにもし ませんよ・・・?」

「あ・・・ん、・・な めてぇ」

「ど  こを?」

「んっ・・・乳首、なめて・・もっとし てぇ・・」

「この、好きモノ」

「あっ、あああんっ!あっ!あんっ!」

シャツを下から乱暴に捲くり上げて、目の前に現われたピンクの突起に吸い付いてやると
彼はとびきり甘えた、鼻に抜けただらしない、甲高い喘ぎ声を上げた。

この声を聞いてはいけない。
この声が、俺を人間とは違う、何か別の生き物に、獣に変えてしまいそうでいつも怖くなる。

でも、本能では危険と悟っているのにやめられない。

彼のこの声を、俺は狂うくらい愛してる。

もっと彼に啼いてほしくて、腰の突き上げはそのままに左手で彼を掻き抱き、
口と右手で乳首を腫れるくらいに貪る。

その弱いところへの執拗な愛撫に、彼の内部が締まって、俺の下半身をガンガンに締め付ける。
ヤバい・・。

 

 




・・彼の力など、もう存在していない。

彼の穴に無遠慮に突き立てられている俺の、
今にもはちきれそうな膨張しきったペニスと、抱えている左腕、壁。

それらだけが、限界が迫り、腰が砕け座り込みそうになる彼を許さなかった。



「や・・・神、もっ」

「もう、な  んです」

「も、・・・・・・イく、イっ  ちゃいそっ・・・」

焦点の定まらない湿った視線で、すがる様に見上げてくるその目。

その湿って甘い、俺の鼓膜を猥褻に振動させる、こびりつく喘ぎ声。

この目は、この声は誰にもわたさない。
俺の前で以外させない。彼は、俺のものだ。


「いいですよ・・イって。
結局イヤイヤい いながら、好 き  なんだから・・」

「や、違・・・こ・・んなことさせ るのもした い・・・のも、
・・神だけ  だよ・・他の誰か じゃ・・・んっ、感じ  ないんだか ら・・っ」

「・・・本 当かよ・・・・・・・・・・・・・・・・」

「ホン トだよ・・オ レのこ と嫌 い・・にな、 らないで 
んっ、あ  ・・お 願いだ・・・からっ」

「早く イ けよ・・・・・・・・・・・」


立っていられない様子、しゃがみ込みそうになる彼。それも許さない。

腰の突き上げはこれ以上ありえないくらい加速していて。

俺のを咥え込んだままの藤真さんが、激しく痙攣しはじめた。

体を、白いノドを仰け反らせて、体中が全部つぱってる感じだ。

愛しい。藤真さんが俺にされて見せる反応、すべて。

その反応を見届けて、
俺は彼の1番弱い左の乳首に噛み付き、下半身は奥の奥を突き刺す。


「あん!あああんっ・・・あ、いして・・る、神・・・んんっあ、ああああああ・・!」

「藤真さ・・・・くっ!・・」


 

同時に達する絶頂。

きつく収縮した藤真さんのソコに、導かれて。

俺は・・藤真さんの最奥に、大量の欲望を注ぎ込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っく・・・・・・・ひっく・・・え・・く」

小さなこどもが駄々をこねるときのようにぺったり、としゃがみ込んだ彼。

乱れた着衣も、髪の毛も唾液も、

秘部から流れ出て太股を汚している、俺の精液さえ拭おうとせず・・

…行為が終わっても、彼のすすり泣き・・涙は止まることはなかった。

これは、きっと痛みのせいでもひどくされたせいでもない。

 

 


 

泣きじゃくる彼の肩に手を伸ばそうとした瞬間、

「や・・イヤ・・お 願い、オレ のこと ・・嫌い、に ならないで・・・
オレこんな・・淫 乱だ・・けど、イ ケナ・・イ子だけど・・
・・神 に、嫌わ れたら・・オレ、死 んじゃ・・う・・」

・・・彼の、声を絞り出すような、懇願する言葉が聞こえた。


 

・・伸ばしかけた自分の手を、必死で諌める。

本当にこの人は、ときどき俺の神経を恐ろしいくらいに逆撫でしてくれる。

藤真さん、を、ときどき本当に、本気で怖いと思うときがある。

今、無力なこどものように泣きじゃくる彼を目の前に、やはりそう思う。

 

彼のこの言葉、行動。わかっていてやっているのか。

俺が、それを見てどう思うのか。
自分が流す涙のその効果を、それが導く結果を見据えてやっているのか。

もし、自覚しているのならば、演技をしているのであれば、彼はとんでもない策士だ。
逆に、まったく自覚していないと言うのならば、彼はこの上なく無邪気で残酷な人間だ。

まったく余裕がない俺を相手に、藤真さんが演じて、避(かわ)しているのだとしたら?

俺に抱かれながらちがう誰かを想像しているのだとしたら?

それとも、俺を本気で・・・・・・・・・・・・・



・・・彼が俺に求めているのものは何であるのか。

俺によってすべて奪われつくしたにみえる彼を前に、
実はずっと以前に奪われていた俺のすべて・・というこの焦燥感は。

ああ、そして、そうではあるけれど、
彼のこの色気に、莫大な引力に逆らうことなど・・・

・・・俺は、やはり手を差し伸べてしまった。

 



 

「藤真さん・・・ひどいことをしてごめんなさい」

後ろから、彼を ぎゅっ と抱きしめる。
抱きしめた、薄い筋肉の乗った細い肩は小刻みに震えていた。

怯えながらも・・ゆっくり後ろを振り返ってきて、
俺を上目遣いで見つめ返してくるあなたに、魔法の言葉を。

彼が好きだと言ってやまない、微笑みとともに。

「・・あなただから俺はいじめたくなるんだ・・藤真さん、愛してる」

「じ  ん・・・・・・・・・・・」

 


懐におずおず飛び込んで、背中にしがみついてきた彼を、迎え入れる。

彼のお気に入りのこの大きな手で、頭を優しく撫でて、
長くて関節の細い、女のような指で彼の髪を梳いて。

彼がもっと名前を呼んでくれとねだってくる、このテノールの声で、慈しんで。
優しい、触れるだけのくちづけを、額や頬にいくつも落として。




 

だが、その行動と俺の頭の中とは完全に真逆だった。

吐き出す言葉は温かく湿っているのに、その優しい質感はまるで羽毛のようなのに。

実際の俺は心ここにあらずで、完全に冷めきっていた。

再び擦りあがるように俺の体を侵食してくる、氷点下の感情。

彼を愛しているという言葉自体に一切偽りはないが・・

・・むしろそれがすべて悪い。

 

 

彼の背中に羽が生えて、どこかに飛んで行ってしまうとすれば、

俺は、地獄に落ちようとも悪魔に魂を売ろうとも、何回でも彼の羽を切り裂き、もぎ取るだろう。

あなたの生み出す、俺を憎らしいくらいに翻弄するリズムも、
生み出すあなた自身という麻薬も、すべて俺だけのものだ。

・・・俺から離れるなんて、許せない。

もしそのときが来るのであれば、俺は彼をこの手で殺めてしまうかもしれない。

俺が残酷にできるのは。残酷にしたいのは、あなただけなのだから・・

そう、これこそが俺の本気。

この気持ち・・最近俺自身、恐ろしくてたまらなくなるんだ。

自分自身の抱えきれない想いに、潰されそうなんだ。

 


 

だから、

あなたが、無意識にでも俺を傷つける・・というのなら、俺は自己防衛を。

俺の愛、という本気の凶器に、仮面を。

ストイックで慈愛に満ちた、優しい微笑を。

この顔に、この心に、
あなたという鋭く研ぎ澄まされた凶器でも、剥がすことができないような硬質の仮面を。

 

 

人間同士なんて 嘘×嘘 で初めて真実になるような関係の中に、芽生えてしまった俺の本気。

もし、この腕の中の彼が偽りだったら?俺だけが、本気だったら??

愛とはすでに偽り?それ自体、実は虚実??

愛することのすぐ後ろにある、優しさは憎しみ?

 


 

俺の胸に顔をうずめている彼に、俺の表情がわかるはずも、わからせるはずもなく。

さっきの行為の余韻の熱で、俺の頭を支配する零下の感情など、悟られる気配もなく。

俺はただただ冷めて、
この薄暗い物置部屋の隅に崩れ寄りかかっている、グレッチのギターを見つめていた。



グレッチ。

繊細が故に一般的には扱いにくい類のギターで弾き手を選び、選ばれたもの以外を寄せ付けない潔癖さ。

が、ギタリストなら・・・いや、ギタリストでなくとも誰もが見惚れるあろう最高の芸術品、木目、そのボディー。

・・・・今、この部屋の隅で、無残に壊された古い標本となっているそれ。

白く丸みを帯びた艶のあるボディーだけそのまま、妙に鮮やかに未練がましく浮かび上がっていて。

購入当時は何十万円もしただろう、この高価で美しいギターの今。

弦は1、2、4弦が切れたまま。あとは張られてすらいない。

ペグはひどくサビついて回るのか分からない。ネックは埃だらけ、アームは取れかけていて。

・・弦を張り直したとしてもまともにチューニングできるか、鳴るかどうかすらわからないくらいだ。

 

 

 

『泥酔したグレッチが階段の 上から転げ落ちてきた』・・・・・・・・・・

 

 

『パイナップルサンド』 の生臭い硬質なワンフレーズが俺の頭を掠める。

 

 

転げ落ちてきたグレッチで、額を、こめかみを切るのがあなたなら、いい。そして、






『奴は大量の血液を皆に 見せびらかしてる』






見せびらかしてきて、くださいよ。






恋人にやられたって。愛してるやつにこんなに酷く愛されたって。






・・・だから、もうそいつ以外愛せないんだって。

 

 

 

「え、い い・・大 丈夫だから。
自分で やれる から・・汚 ・・れちゃうよ?ハンカ チ」

「大丈夫ですから・・俺がこうしたいんです」

「じん・・あ りがと・・・・ちょ、 っと恥ずかし・・」

俺はカバンからハンカチを取り出し、彼の体を拭いてやる。

彼を真後ろから眺める。

その芸術品を、彫刻のような美しい骨格を、俺は首をかしげて穴が空くほどに見つめる。

 

そして見比べる。隅に置き去りの、バラバラにされたグレッチのギターと。

ああ、わかった気もする。置き去りにした理由はわかりかねるにせよ。

 

これの持ち主は、このギターを誰にも触れさせたくなかったのではないだろうか。

自分のものに、完全に自分だけのものにしたかったのではないだろうか。

だから・・

 

『愛してる』 というこのひと言は、
なんて甘美でなんて恐ろしい言葉なのだろうか。

 

・・俺が愛してる藤真さんを、このグレッチみたいにできたらいいのに。

壊れた標本のように・・バラバラに、俺の手で。

あなたが大好きな俺の白いパッシブベースで、全身なぶり倒して。

俺だけの体と言葉と行為で。無惨に、傷つけて。俺以外、だれも愛せない姿に、ぼろぼろに。

 


 

ああ、そうだ。

3104丁目のライブハウスに昔、よく来ていた女子高生2人。レズビアンの2人。

細い腕。
判子(ハンコ)注射の跡が見え隠れしていたすぐ下。

お揃いの黒のTシャツ・・袖に見え隠れしていた引っ掻いた跡。

ひどい、蚯蚓腫れ。柔らかそうな肌に、針で、引っ掻いた跡。


「お互いの名前、彫ってんの」 


って誇らしげに、
人目を気にする様子なんか微塵もなく、ずっとじゃれあってた。

あのときは、あなたと出会う以前で、その子たちをなんて愚かなんだって思ったけど、

一時の感情に流されて、愛だの恋だの幻想に溺れて、なんて浪費家なんだって思ったけど、



 

・・ねぇ、それをやりましょう。

俺たちも、タトゥーを入れましょう。

二人で愚かに。もっとひどく、だらしなく愚かに。なんて甘美な堕落。

あなたを連れて、もう2度と這い上がれない闇の果てまで落ちてみせるから。

闇の底の底の底なしの、途切れることのない愛を約束するから。

互いの体に、互いのイニシャルを。深く、肉に食い込むくらいに、互いの所有印を。存在証明を。

あなたの1番感じる左胸辺りに、いつも俺を感じて止まないように、俺のイニシャルを。

小悪魔の爪あとが耐えない俺の背中に、俺の心に、その加害者の、あなたのイニシャルを。

その文字が互いの体内に侵食すればいい。毒のように全身に回って、麻痺させてしまえば。

 

 

 

『殺しにきたぜ I LOVE YOU』 なんて、

あの言葉を聞いたとき俺はまだ幼くて、

年齢がどう・・以前に、それより何より、あなたに出会う以前で。

 

その言葉の意味なんて、わかるはずもなく・・

・・なんて幼稚、短絡的で物騒で、理解不能な言葉・・と思ってた。

でも、今の俺にはその意味が痛いほどわかる。

あなたと出会ってしまった、今の俺には。

きっとその言葉は、こんな感情が発させた狂気の叫び。

正直で直接的な、ただ一つの切実な願いの形。

 

 

・・・俺の、しっかりアイロンかかっていた、白地のハンカチはすでに、

2人の精液や唾液、汗にまみれてぐちゃぐちゃで・・

・・・・・それが、今の俺にはこの上なく愛しく感じられた。

だから俺は・・・その布切れに、彼に知られないくらい、小さな小さなくちづけを落とした。

             

 

 

 

 

『エクスキューズ・ミー Mr.ポストマン 天国の住所を教えて』・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

*BGMおよび参考音源・・・

『パイナップルサンド』

『3104丁目のダンスホールに足を向けろ』 (共にブランキージェットシティ)

『ルーシー』 (アカツキの 『A3』 というアルバムの4曲目)

『Grab the fire swinging in the rain』、『Capitalized Suffering』 (マイノリティーブルースバンドのアルバム2枚全曲)

 

 

参考(補足)


*殺しにきたぜ I LOVE YOU・・・1992年にブランキージェットシティが行ったライブ(ツアー)の名前。

*グレッチのギター・・・YAMAHAとかフェンダーとかと同じ、楽器のメーカーの名前。
で、そこから発売されてるギターのことを指してます。

ちなみに、ブランキージェットシティの浅井健一氏の愛器はこれ
Gretsch (グレッチ)のPX6119 Chet Atkins Tennesseanというモデル。
他に有名どころではミッシェルガンエレファント(解散しました)のチバユウスケ氏もグレッチ使い。

 

<さらに補足>

椎名林檎の 『丸ノ内サディスティック』 という歌の中に 
『そしたらベンジー 私をグレッチで殴って』 と出てくる。 

これを訳(?)してみると、 

ベンジー=浅井健一氏の愛称であることから、

『浅井健一さん、私を貴方のグレッチのギターでどうぞお打ちになって!』・・と、なる・・か?

・・・う〜〜ん、痛そう。でも打たれたい気持ちはわからなくもない。

 

 

 

 

<本編について>

テーマは考えすぎの神さん、ってことで。
(ついに書いてしまったエロには触れず(笑) 私みたいなヘタレにはこの程度で限界)

この二人、お互いのことを気がふれちゃうくらいに好きなんだけど、
なんでか自分のそういう気持ちの方が相手より何百倍も重いって考えてるみたい。

肉体的には神>>>藤真でも、実は藤真>>>神←宗一郎の思い込み。本当は神(の想い)=藤真)

 

だから、自分が想うくらい相手は想ってくれてない・・と自分自身を憐れがって、感情の押し付け合いをする毎日。
ほんとうはお互いこれ以上ないくらいホンキなのに。

で、本気に本気が重なってって止まる事もつゆ知らず、どんどん相乗効果を・・って疲れる関係だなぁ(笑)。
・・・つまりはこの人たち、ただのバカップルなのにね。

 

ちなみに刺青(入れ墨)ネタは某サイト、J様の戴き絵より勝手に連想、拝借。
(ほんとうにありがとうございました!)

てかホントにそういう女子高生2人に私は名古屋は栄で出会ったことがある。
(腕に彫ってたのは、お互いのカレシの名前だけど)

ヤキ入れるのと、同じ心理かな??まぁいいや。


この素敵な素敵な扉絵をくださった、ジュジュ様に捧げます(これを・・?虐めじゃないですよゴメンなさい!


(2004.12.13)













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