嗅覚テレポーテーション第11話  
かくれんぼ
 


「・・・王様・・王様・・・」

・・・夜中にそう呼ばれて目を覚ますと、ぐっしょりと汗をかいていた。
身体を起こすと、わずかな疲労感がある。


「大丈夫ですか?随分とうなされておいででしたが」

「・・ああ」

「怖い夢でもご覧になりましたか?」

「大丈夫だ・・起こしてしまったか?すまなかったな」

「・・問題ありませんわ」

・・・牧は、そこでは何故か ”王様” と呼ばれていた。
闇で染まった窓の外に・・目を疑うくらいに、大きな月がある。
それは・・・今にも自分とぶつかってしまいそうな程の距離にまで、迫っていて。
しかもここでの月はどうやら、常に青いようだ・・ブルームーンだ。

・・・そして目の前には、たった今
悪夢にうなされる牧を起こしてくれた女性がいる。

 

「実に奇妙な夢を観ていた・・全ては覚えておらんのだが・・」

「それは、どんな夢なのです?」

彼女が、牧の汗をシルク地のような布で優しく拭いながら、問うてくる。

「・・ここではない、どこか別の世界に・・・私はいた。
まったく知らない世界だ。本で読んだことも、今まで夢に見たこともない。

・・そこの世界は、どうも我々の世界よりも文明が進んでいるらしい。
見たことのない機械仕掛けのものがたくさんあった。

私は不思議な着物を・・窮屈そうな白い薄い布を身に纏っていて・・
そして・・私の隣に、とても美しい男がいた」

「男?」

「それは・・・おまえだよ。王妃」

「その男性が、わたくしなのですか?」

「ああ・・・そうだ。違いない」

「何故、そう思われるのです?似ていましたか?」

「容姿も少し似ていたが、それよりも・・匂い、だな。嗅覚でわかった」

 

王妃からは、いつもあの花の匂いがする。

この世界の険しい山の頂に、年中咲き乱れている、夜の闇の中で発光する花。

乳白色で、淡い紫・・藤色の。透けそうな薄い花びらが4枚の、
牧の大きな手のひらに花の1つがちょうど収まるくらいの。
葉に茎は・・繊細で、ガラス細工のように透明で、混じり気も穢(けが)れもない緑。
触れたら身体も心も全て浄化されそうな、でも触れるのを躊躇(ためら)わせるような
高貴な雰囲気を纏った・・・不思議な花。

・・あの花の香りは、簡単には言い表せない。単純ではない。
柑橘系と言えないこともない。だが、もっとオリエンタルな・・妖艶な・・・。
麝香(じゃこう)のような・・薔薇のようなフローラルでもあるような・・・。

牧は、あの花の匂いが、王妃の匂いが、とても好きだった。

そう、あの花の名前は・・・。


「嗅覚は・・五感の中で、一番原始的で本能的な感覚ですね」
「あ、ああ。遠い昔、生死を分かつ判断をそれに頼っていたと言われているしな」
「・・王様は、特に匂いに敏感でいらっしゃいますものね」
「そうかな」
「ええ、とても・・。
ここではない世界で・・王様もそこにいらっしゃって・・
わたくしもそこにいて・・でもわたくしは男性の姿で。

それは不思議ですわね。わたくしも、その世界を観てみたいです」
「・・随分、馬鹿馬鹿しい夢であろう?」
「王様、その夢は馬鹿馬鹿しくございませんわ」
「そうか?」
「・・すぐにお休みになられますか?」
「いや、今夜はもう・・しばらく、眠れそうにない」
「それならこの王妃が、物語をお聴かせしようと思いますが・・いかがでしょう?」
「ほう、めずらしいこともあるものだな・・・どれ」

牧は、まるで自分が子どもに戻ったかのように
王妃に膝枕をさせ、当たり前のようにそこを陣取った。

「・・王様に甘えていただけるとは、光栄です」

王妃は牧の頭を両手で優しく撫でる。
そしておでこに軽いキスを1つ落とすと、話し始めた。
 

「・・・今からわたくしがお話させていただくのは、“ここではないどこかの世界”の話です。
“ここではない世界”は、今まさに他の星の上で繰り広げられているかもしれないし、
またはこの星の上での、過去や未来かもしれません。
そして、その世界の全てに、わたくしたちが存在している可能性があります」
「・・どういう意味だ?」
「同じ魂が、すべての世界に存在すると考えるのです。
魂は、できることに制約がありません。場所も、時間も。
それに分裂もできると言われています・・つまり、一つではないということです。

どこへでも自由に移動できるし、同時に複数の場所に存在できるかもしれないのです。
だから、たった今、他の星で同時にわたくしたちが生きていたとしても、何ら不思議はないのです」

「なるほど」
「さらに、魂というのは永遠の命を持っていると言われます。
肉体はただの入れ物に過ぎず・・もし肉体が死んでしまっても、
魂はまた、入れ物を変えてどこかに出現するのです。
魂にとって肉体が死ぬことなど、大したことではないのです」

「・・それが前世とか、過去世とか呼ばれるものか?」
「そうですね。魂は非常に高齢です。肉体はせいぜい100年ですが、魂は永遠・・・。
しかし、まだ数回しか人生を生きていない魂もあれば、もう何万回も生きている魂もあります。
魂によって輪廻転生の回数が異なるのです・・これは、生まれ変わりのことですね」

「・・だから、肉体の年齢と精神の年齢はすべて比例している訳ではないのだな。
どうしようもなく子どもっぽい大人がいたり、逆に大人顔負けに落ち着いた子どもがいたりする」
「さすが王様。その通りです」
「・・まさか・・・先程の夢の私とおまえが、その話のようであると?」
「ええ」
「どこか別の星での私とおまえか、前世か未来での、私とおまえであると・・・」
「はい」
「・・ただの夢だぞ」

夢にしては、リアルすぎる夢であったが。

「夢であって、夢ではございませんわ。先ほど申し上げましたように、
魂は同時に様々な星や時代に存在できます。
それらは・・普段出逢うことはありませんが・・何かの拍子に・・
例えば先程の王様のように睡眠の最中に潜在意識を通して・・
突如、境界線を超えて、テレポートしてしまうのです」

「テレポート?・・瞬間移動か」
「はい。テレポートは・・人だけでなく意識や五感、他の物体や物質についても起こります。
・・・例えばこちらの世界の月は青色ですが、”ここではない世界”ではもしかしたら・・
月は黄色や白かもしれない。でも、こちらの世界の青色の月が、何かのキッカケでふと
”ここではない世界”に出現してしまうことだって・・有り得るのです」

「向こうの世界の月・・までは観ていないが、確かに王妃、おまえは今のままの匂いであったな。
・・この話は、おまえの作り話なのか?よく出来た話だ」
「いえ。魔法使いであった祖母から、昔よく聴かされた話ですのよ。
祖母は、この事を人類が忘れた真実だと言っておりました」
「そうか」

「ええ、この話の解釈からすれば・・王様がご覧になった夢は馬鹿馬鹿しく等ないのです。
あれは“ここではない世界”で暮らすわたくしたちであった。
そう考えると、とても自然で、素晴らしいことなのです」

「自然で・・・素晴らしい?」
「ええ、とても」
「・・“ここではない世界”でも、入れ物・・外見が異なるだけで、
この世界と同じ事が起こるのか?」
「いいえ。ここの過去ですら現在とは異なる様に、
この世界と”ここではない世界”は同じようにはなりません。
こことはまったく別次元の出来事ですから」

「それでも・・私とおまえは、確かに出逢っていたぞ」
「それでしたら・・ソウルメイトという言葉をお聴きになったことがございますか?」
「ソウルメイト?」
「ええ。ソウルメイトとは、“魂の友”のことです。
どの時代でも、どの世界でも、一緒に旅をします。
ですから、王様のご覧になった世界で王様とわたくしが一緒にいるのも、
何ら不思議ではないのです」

「一緒に旅をする?私とおまえが、そのソウルメイトであると?」
「はい。おこがましいでしょうか?」
「いや、そんなことはない・・ソウルメイトとは、夫婦なのか?」
「いえ、そうではありません。
王様とわたくしはたまたま夫婦ですが、どんな関係でも成り立ちます。
同性同士、異性同士・・もちろん年齢も関係ありません。
親子、兄弟姉妹、夫婦、恋人、師弟、親友、仲間・・・はたまた敵同士」

「敵同士?」
「敵も、有り得ます。
ソウルメイトとは、自分の人生の転機に関わってくる人物の総称のことですから。
自分の人生が、その人物との出逢いによって・・良くも悪くも根底から変わってしまうような。
そういう、自分にとって強力な影響力を持った人物のこと・・言い換えれば、触媒のような」

「触媒?・・キャタリストか?」

王妃の匂いがするあの花と、同じ名前の。


「キャタリスト・・そうですね。刺激する・・変化を促すもののことですから」
「・・ソウルメイトとは、触媒の役割なのだな。触れると自らが触発されると言う訳か」
「ええ。良くも悪くも、根底から」
「“ここではない世界”でも私とおまえは出逢えていた・・
どこにいてもソウルメイトである限り、おまえとは出逢えるのだな」

「それは・・・わかりません」
「何・・?何故だ?」
「ある世界では、一生出逢わないソウルメイトもいます」
「出逢わないことがあるのか?」
「はい、何故なら・・ソウルメイトは、1人に対して1人ではないからです。
人数は決まっていませんが、数十人いる場合もあります。
・・100年に満たない短い人生の中で、毎回必ず全員と出逢えるとは限りません」

「・・それでも、私は絶対におまえを見つけに行くぞ」
「王様、光栄ですわ・・しかしそれは・・どうでしょうか?
“ここではない世界”では、王はすでにわたくしではないソウルメイトたちと
満足いく暮らしをしているかもしれませんわよ」

「何だと・・!?おまえがいないのに満足など、できるはずがないだろう!!」
「王様、安心なさって。例えわたくしがいなくても、大丈夫です」
「安心など、できるものか!何が大丈夫だと言うのだ!?
・・今すぐ、約束しろ。“ここではない世界”のどこにいても、必ず私と巡り合うと!!」

「・・・王様、その約束は・・難しいかもしれません。」
「何?」
「できない、相談ですわ」
「出来ない相談・・だと!?何を言うのだ!!」

王は、王妃の言葉に耳を疑った。
王妃が自分の言う事に反発したのは、これが初めてであった。

「先ほども申し上げましたように、ソウルメイトは1人に対して、
決して1人ではありません。ですから、順番やタイミングによって・・
どのソウルメイトにいつ出逢うによって、運命は大きく変わるのです」
「だから、何だと言うのだ」

「・・・ある世界では、わたくしは王様にとって必要がないかもしれません。
メリットになるならともかく・・出逢わない方が良い場合だってあるのです」
「そんな事は恐れはせぬ!私にとって、必要なのは、おまえだけだ」
「仲間だとは限りませんのよ。王様の、敵であるかも」
「例え敵同士でも、そんなものは関係ない!構わぬ!!」

「王様・・」
「王妃、どこの世界にいても、おまえは私のものだ。他の誰にも渡しはせぬ。
必ずおまえを見つけだして、娶(めと)ってやる」
「王様?先ほどのわたくしの話を聞いてみえましたか?
王様とわたくしはこの世界ではたまたま夫婦ですが・・・
どんな関係でも成り立ちますのよ。血縁者で有る場合もある。親子だって、兄弟姉妹だって。
他人同士であったとしても・・・実際王様が先程ご覧になられた世界でも、
”ここではない世界”で、わたくしは男性だったのでしょう?」

「それでも・・!私とおまえは・・・恋人か夫婦しか、有り得ぬだろう!
おまえと恋愛できないのであれば、私は、一体、誰と・・!?
一生、そんなもの・・・おまえなしでは、私にはあり得ぬ!!」

「王様・・・」

「先程の夢であっても・・男であろうが女であろうが関係ない。おまえは、私のものだ。
夢でもおまえに気づけたように・・必ず見つけ出せる!」
「”ここではない世界”が、この世界のように平和であるとは限らないのに?
もしかしたら・・向こうの世界では私たちは互いの命を狙う敵同士かもしれませんし、
もしかしたら・・何らかの事情で、わたくしが世界を敵に回している、大罪人かもしれませんのに?」

「・・・もし!もしそうであっても!!私が何とかしてやる!!

必ず見つけ出して、何度でも救ってみせる!!
おまえが世界を敵に回しているというなら・・
おまえを苦しめる全てのものを、わたしの全てをかけて苦しめてやる!
そして最後は・・国から追い払ってやる!!皆殺しにしてやる!!」

「まぁ恐ろしい!・・そんな物騒な事、おっしゃらないで。まったく望みませんわ」
「!!・・それならば・・・私がそいつらを
全部おまえの味方に変えてやろう!!それでどうだ!?」

「・・・王様、何故そこまで・・」
「おまえのためなら、私は何でもやれる覚悟があるのだ」
「王様・・」
「だからおまえも、肝に銘じることだ。

どの世界のどの時代にいても・・この私から逃げられるなどと、思うな!!」
「嫌ですわ・・逃げようなど、思ってもおりません」
「・・それなら、何故首を縦に振らぬのだ!!約束しろ!!今すぐに!!
“ここではない世界”のどこにいても、必ず私と巡り合うと!!」

・・たかだか夢と王妃の祖母の昔話に、ここまで喰い下がり形相を変えている牧に
王妃は少し驚いているようにも、呆れているようにも見える。

仕方がなかった。
牧は、必死だった。
今この瞬間にも、怒りなのか悲しみなのか、よくわからない激情が
後から後から湧いてきて、身体は震えだしそうになっていた。

「・・・王様」
「王妃、頼むから・・約束しておくれ・・」
牧が、消え入りそうな声で、懇願する。

「・・わかりました。意地悪をしましたね。ごめんなさい。
わたくしは、どこの世界にいても王様のものです。ずっと夫婦でおりますわ」
「誓ってか」
「ええ、誓います」

「その誓い・・忘れるでないぞ」
「もちろん」

「もし・・もし私ではない他の誰かと一緒になろうものなら・・・殺す。
おまえではなく、おまえの相手をな」
「まぁ、怖い」
「・・どんなに誰かを傷つけることになろうが・・おまえだけは譲れんのだ。
おまえは、私の全てなのだ」
「本当に?」
「ああ、もちろんだ!私が今まで嘘をついたことがあったか?」
「・・嘘なら嘘で、突き通してくださいね」
「・・・どういう意味だ」
「嘘をどれだけ重ねたとしても・・突き通してくだされば、
王の世界で例えそれが嘘であっても・・わたくしの世界では、それらはすべて真実になるのです」


・・・牧は、王妃に泣いて謝罪したくなった。

牧はこの夜、初めて王妃に嘘をついた。

自分の事は、棚に上げて。

先程の夢で・・鮮明に覚えていることがある。

それは・・・恐ろしくてたまらないことだ。

 

・・夢の中での自分は、信じ難かった。情けなかった。

”ここではない世界”の自分は、隣にいる美しい男の正体にまったく気付いていない。 

横に並んで座っているのに・・・まったく気付かないで、
2人揃って機械のようなものを一心不乱にタイプし続けている。

たまに何か言葉を交わすものの、無表情で、そっけなく、顔も見ないで・・
お互い機械の画面に集中していて・・。

おい、気付かぬか!!
おまえの横にいるその美しい男は、おまえの王妃なのだぞ!!

――そう呼びかけようとするが、声にならない。

 

”ここではない世界”は、この上なく恐ろしい。

自分は、何故、そのようになってしまっている?

恐らく・・嗅覚が・・非常に鈍っているようだった。

それに王妃であるはずのその男は、
自分の世界と変わらないあの花の匂いを発してはいるが、それがとても弱々しく。

その匂いで、嗅覚で自分を気付かせてくれれば良いものを!!

・・王妃であるはずのその男は、
まるで自分から発する匂いを、わざと抑えているようで・・。

一体何を隠す必要があるのだろうか!?
王である自分に、正体を気付かせないようにするためなのか!?

気付かない自分。

気付かせない王妃。

実に恐ろしい。

”ここではない世界”は、恐ろしくてたまらない。

・・あのままでは・・あの世界での自分は、王妃ではなく、一体他の誰と、
愛を囁き合ったり、夫婦になったりするつもりなのであろうか?

王妃ではない、誰と・・・!?

そんなことは、有り得ない・・・。

 

「必ず見つけ出す・・何度でも救ってやる・・・」

・・・牧は、王妃にしがみつくように抱きつき
まるでうわ言のようにその言葉を繰り返した。


牧は、この世界で王妃に初めて出逢ったときのことを思い出していた。

あの夜・・宴の晩・・まだあの時、自分も王妃もわずか17歳であった。

国中から逞しい男たちや美しい女たちが集まってきて
華美な衣装を身に纏い、踊り明かしたあの、祭りの晩。

・・王妃は、別段派手な衣装を着ているのでも、激しい踊りを踊っているのでもなかったが、
まるで虫が光に集まるかのように、人々の注目を一身に浴びていた。

そしてそれは・・・牧にしてみても例外ではなかった。


王妃は正に、ダンシングクイーンだった。

一目で、彼女に恋に落ちた。

彼女が踊りの最中に・・

牧と初めて目が合ったその時に・・

口づけを投げて寄こした・・それだけで、もう。

 

「王様、言い忘れましたが・・ヒトではなく
動物や植物に生まれることだってあるかもしれませんわよ?」
今は牧の妃となったいつかのダンシングクイーンが、牧の腕の中で、意地悪を装って問うてくる。

・・あれから随分月日が流れたが、王妃に対する想いは変わらない。
それどころか、日々愛しさが募るばかりで・・・。

「構うものか!!動物であろうと植物であろうと・・・
それが例え他人の家の犬小屋だろうと、険しい山の頂の上であろうと、月の裏側であろうと!!」

「まぁ」

「・・どんな深い闇に飲まれて、地の果てで吐き出されていても!!
必ずおまえを見つけ出して、何度でも救ってやる!!」

「とても、頼もしい」

「当たり前だ・・・だからおまえも、どの世界にいても
無駄な抵抗はやめて、隠れてないで私の前に素直に出てくるのだぞ」

「王様とのかくれんぼなど・・勝てる気がいたしませんわ。すぐに降参ですわね」

「王妃・・私にはおまえだけだ。愛しているぞ」

「王様・・わたくしもです」

「それでは許さん・・はっきりと言え」

「あら、はいはい」

「はいはい、とは何だ!」

「王様、わたくしも、もちろん王様を愛していますわ」

「・・本当だな?」

「もちろん」

「・・もっと言ってくれ」

「王様・・」

「私が眠るまで・・聴かせておくれ・・頼むから・・」

「王様・・可愛い方」

王妃がまるで子どもをあやす様に、牧の背中をさすった。

彼女からは・・・相変わらず、あの花の・・キャタリストの匂いがした。


(必ずおまえを見つけ出す・・・必ず。どこにいようとも)
どれだけ心に強く誓おうとも、この手を離したら・・・
無限の世界でのかくれんぼが開始されるかもしれないと思うと
牧は、恐ろしくてたまらなかった。

・・だが、王妃の甘い匂いと『愛している』という囁きが優しい睡眠導入剤となり、
安らかな眠りの中へ、だんだんと溶けていく。


・・・まどろむ意識の中で、誰かが言った。誰かが答えた。

『隠れてなんかいないで出ておいで・・もういいかい』

『まぁだだよ』


そして抱き合う2人を・・・

窓の外から巨大なブルームーンが覗いていた。

ここの世界では当たり前の、

”ここではない世界”では有り得ない、ブルームーンが。



 

 
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<参考・妄想誘発BGM>

・かくれんぼ BIGMAMA

・マニフェスト RADWIMPS


・KISS ME 氷室京介

・STAY
 氷室京介

・BEAUTIFUL DREAMER GLAY

・時の雫 GLAY

・Runaway Runaway GLAY

<考え方>

・1Q84 村上春樹

・シータヒーリング ヴァイアナスタイバル



久々に音楽聴きまくりながら書きましたー。
中でも BIGMAMAのかくれんぼ には感謝。これがなかったから書けなかった。
でも1番聴いてたのはGLAYのアルバム・・・。THE FRUSTRATED。
突然パラレル?みたいな。書いてる本人がびっくり。
でも、牧と藤真が帝王と女王なのは、今に始まったことではない。たぶんマヤ暦以前。

こういう文は、初の試み。でも、意外と気に入ってます。
牧は、偉大な帝王。藤真に接する時だけ、結構な勢いで幼稚・・・。


2013.05.02


(お手数ですが、ブラウザでお戻り願います)