『
私に、会ったことがある??』
気づくわけにいかなかった。
認めるわけにいかなかっただけなんだ。
だけど、本当は、
・・・・・・本当はオレは。
ずっと・・・・・、ずっとおまえを見ていた。
everywhere5
誤算だ。
初日から地獄、望むところだった。
初日からみっちり・・・・・練習するはずだった。したかった。
なのに予想に反して、1日目なので無理はしないというもっともらしい言い分の中、
軽く流すだけで驚くほど早く切り上げられた。
・・・・・・もちろん個人練もみっちりするつもりだったのに、
というか、していたのだが。
・・・・・・・まったく疲れていない。
悲しいくらいに脳みそが覚醒している。
倒れるくらいに練習して、ヘトヘトになって、
飯を食べるのも辛いくらいに疲れて、何も考えずに泥のように眠りたかった。
なのに。
こんなにもオレの意識をはっきりさせている原因は、
2人部屋、・・・・同室のあいつだ。
・・・・・・・・オレの意識をはっきりと、そして激しく混乱させる男。
(・・・・・ほんとは勉強もしなくちゃいけないってのに。)
バスケはしてたって、受験生だっつうの。
学校からの課題もみっちり出てる。夜、やるつもりでここにも持ってきた。
だが、部屋にはあいつがいる。
(無理だ)
教科書の内容なんて頭に入るはずがない。
だってオレの頭の中はバスから降りたころからアイツのことばかり・・・・。
(・・・・・・どうなっちゃったんだろ、オレ)
・・・・・・・・・こんな感じにおかしくなったオレは、とりあえず対象物からの緊急避難を試みた。
それで今、海南トリオの部屋にいるわけだ。
オレでも自分自身わけがわからないんだから、他のやつらの目にはさぞ挙動不審に映っていることだろう。
「牧、ここのシャワー借りていいか??」
「構わんが・・・自分とこの部屋のじゃいけないのか??」
「ああ、なんか調子悪いみたいでさ、悪いけど借りるぞ」
「・・・そうか。仙道はどうするんだ」
「さぁ・・・・・・越野たちんとこのでも借りるんじゃねぇの?そんなことまで知るかよ」
「・・・・・ほぅ・・・・」
「・・・・・なんだよ・・・・・」
「・・・・藤真、オマエ・・・・・・」
「・・・・なんなんだよ!!!」
「・・・・いや」
くそ〜〜牧、おまえもオレの様子がおかしいって言いたいのかよ・・・っっ
そんなにおかしいかよ?!オレ・・・・・・・。
・・・・・・・・もちろんウソだ、シャワーの調子が悪いなんて。
あいつのいる部屋で、風呂なんか入れるもんか。
ガラスのすぐ向こうに、仙道がいる部屋で風呂、なんて。
絶対ムリだ。
・・・・・・・体中の温度が上がりに上がって、湯に溶けて流れてしまいそうで。
・・・・・・風呂は牧たちに貸してもらって、なんとか入ることができた。
が。
すぐにくるべきときは来て。
消灯時間もせまった今、オレがこの部屋にとどまる言い訳なんて、考えつかなかった。
(オレが遠慮することなんてない。オレのほうが先輩なんだし)
(だいたい、なんであいつとオレが『また』同室なんだよ。そこから間違ってる)
(・・・・部屋に戻ったら、すぐに寝るんだ。寝れなくても、ベットに入って目をつむる。寝たフリだ)
・・・・・・・・部屋に向かうまで、いろいろな考えが頭を駆け巡った。
だいたい越野が悪い。
朝からあんな話を聞かされて、意識しないわけにはいかなくなるじゃないか・・・・・・。
あ。
・・・・・・・また思い出してしまった・・・・。
そうだよ。
あいつはエロ魔だ。
あいつなんて不潔だ、やめておいたほうがいい、とんでもないやつだ。
あいつのせいで朝からオレはあんな話を聞くハメになったし、
あの炎天下の中、みんな待たされた。
それに・・・去年の合宿を思い出せ。
あいつにおもちゃにされかけたんじゃないか。
オレは、本気じゃないヤツを相手にしてるほどヒマじゃないし、
オレではあいつを本気にすることができないってのも、悔しいがもう実証済みなのだ。
・・・・・確かに行きのバスの中でオレはあいつに許すって言ったけど、やっぱやめた。却下だ、取り消しだ。
この、わけのわかんないオレの胸の煩わしさは、あいつに対する怒りだと、
・・・・・・・・・・そう思え、思い込むんだ・・・・・・。
そうこうしてるうちにオレ(とあいつ)の部屋の扉は目の前で。
(クソっっもう知るかっっうるさいっっ・・・・・・・・・・・・・・・・・)
自分の多重人格な心の声たちを一喝して、オレはノブがちぎれんばかりの勢いで扉を開け放ち、ずかずかと室内に進入した。
「あ、おかえりなさ〜〜い」
オレのその様子にそんな驚くでもなく、仙道は去年と同じ位置の、手前のベットの上でくつろいでいた。
そして不覚にも、逆にオレがその仙道に驚かされてしまった。
シャワーをあびたのだろう、トレードマークのつんつん頭じゃなくなっていたから。
髪を下ろした仙道を見るのは初めてだったから。
・・・・・・・・・・・・・色っぽいと思ってしまったから。
「あれ、藤真さんシャワー浴びたんですか??髪の毛濡れてますけど」
オレに話かけるな・・・・・・。
「ああ、牧んとこの部屋のを借りたんだ」
なんでもないような会話でさえ、声が喉にこびりついて、裏返る。
「なんで、また??」
・・・・・やめてくれ・・・死んじゃうよ・・・。
「・・・・なんとなくだ」
・・・・・・・・・・そのオレの言葉「なんとなく」に、仙道が身を固くしたような気がした。
・・・・・・なに、びびってんだよ。
『なんとなく』はおまえの十八番だろ??
去年、そうやってオレをいじめたんじゃないか。
なのに、なんでそんなにおまえがツラそうなんだよ。
「・・・なんとなく・・・・なんです??」
「だから、なんとなく」
「・・・・・・・よくわからないけど、わかりました」
「おう」
「・・・・・・何、怒ってるんです??」
・・・・・・おまえは何、悲しそうなんだよ・・・・・・・。
オレ、言ってることが支離滅裂だ。
よりによって自分が嫌いな『逃げ』の部類の言葉を使うなんて・・・・・、まして、
1年も経ってるのに、バスの中で許したはずなのにまだ根に持ってて、仕返ししてるなんて。
・・・・やっぱりオレは執念深く、さらにアドリブに弱いのだということを自覚させられた。
「・・・・なんか藤真さん、お疲みたいですね」
ああ、おまえの傍にいるといつもより心臓に負担かかるからな。どきどきって。
「・・・・・そういうおまえは随分とくつろいでんだな」
そりゃくつろげるだろう。
オレと違って、お前はオレのことなんかどうでもいいんだからな。気も使わないだろ?
さっきおまえがオレの言葉に身を固くしたなんて、傷ついたなんて思ったのは、考え違いか?
・・・オレと話しながらもウォークマンを片耳だけ聴いている。失礼なやつだ。
ベットの隅にはミネラルウォーターのペットボトルが転がっていて。
仙道はベットに背中だけあずけて、ムダにでかい体をだらーーんとさせていて。
髪もおろして、真っ白のTシャツに紺のハーフパンツ。
その絵に描いたようなラフさに、オレは目を奪われていた。
見ちゃ、いけないのに。
家で1人のときはいつも、トランクス1枚ですから」
「・・・・・・・・そうなのか?」
「はい。でも、ね。今日はちゃんと上着てるでしょ。気ぃ使ってるんですよ。それとも脱いでもいいです??」
「・・・・・・そのまま着てろ」
まったく、あいかわらず仙道ってやつは・・・・。
あれ、ちょっと待て。
仙道はいつも家では半裸・・・ってことか。
ということは、越野が見たっていう仙道の上半身のハダカも説明つくんじゃあないのか??
いや待て。
家で『1人のとき』っていったぞ。コイツは。
ひとりじゃない上に、一緒にいたのは女。
・・・・・・って、なんでオレはあの話をこんなに気にしてんだっっ・・・・・
これじゃあまるで・・・・・・・嫉妬じゃないか。
(っていうか、嫉妬だろ。明らかに)
・・・・・・もう1人のオレが、アマノジャクなオレにすかさず突っ込みを入れてくる。
頼むよ、オレの頭でケンカしないでくれ・・・・・。
突然現れた、何年も音沙汰してた感情に体がついていかない。
アタマ、痛・・・・・・・・・・・。
「もう、いいっっオレは寝るっっ」
「なにがもういいんです??」
「・・・・・・・なんでもだっっ!!」
「・・・はいはい」
ああ、またどうしようもない言葉を吐いてしまった。
仙道も呆れている・・・っていうか、なんか悲しそうにみえる??
・・・もしかして、もしかして仙道も1年前、
こんなどうしようもない気持ちだったから、
それをオレに悟られないために『なんとなく』ってどうしようもない言葉を使ったんじゃないかって気になってきた。
でも。
でも、それはきっとオレの願望にすぎない。
これ以上こいつと話していたらボロが出て頭痛のオンパレードに決まってる。
こいつと話していると、どんどん自分の余裕が吸い取られていくようで・・・・・・・。
でも、その頭痛が気持ちイイなんてちょっと思ってしまってるオレは、
・・・・・・もう完璧にイカれてる精神的マゾ野郎なんだろうか。
あ。
そのとき、聴きなれているオレの携帯の着信が・・・・・・・、と思った。
誰だろ。
「あ、ちょっとすみません」
しかし。
実際は、
・・・・・・仙道のケータイだ?!
オレと、まったく同じ着信音。
何故だ。
偶然のはずないだろ。
これだけ音楽が溢れてる世の中で。
・・・・・洋楽だし、
別に最新曲ってわけじゃない。
花形が・・・そうだ、花形が、
オレ、この曲好きっていったら、わざわざ探してくれたモノなんだ。
花形は、全然扱ってるとこ見つからなくて苦労したっていってた。
オレは1年前からずっとその着信なんだ。
・・・・・・・・1年も前から・・・・・・・・・・・・・・・
MICHELL BRANCHのeverywhere・・・大好きな曲が大変なことに。
この曲は私の中で勝手に仙藤のテーマです(というか藤真のテーマ)。
てか、ホンキで息切れしてきました;
同じところを何度もぐるぐるぐるぐる・・・・・・いらいらいらいら・・・・・
書いてる本人でもこんな気分だから、読んでくださってる方なんて(゚Д゚) ゴルァ!!でしょうね・・・・・;
すみません、もう引っ張りません。今度で終わりです。