『あなたの手に触れたとき
わかったの
その美しさが
私たちここから始まるの
あなたはいつも私の光
夜が明けないことを望んでるわ
どこにいたって私は
あなたをそう感じてる』
・・・・また、あの夢だ。
霧の中の長身の男。
・・・・・・・・・・・・・今度こそ。
顔を見てやろうと、何が何でも見たいと思って走りよって。
その男の腕を、捕まえた。
そして、自分より10センチは高い長身を見上げた先には・・・・・・・・。
everywhere4
「・・・・・・・・・藤真さん、だいじょうぶ??」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・あ・・・??」
目の前には、仙道の顔。近っ。思わず腰が引ける。
どうやらオレはバスの中で眠ってしまっていたらしい。
夢の中の男の顔・・・・・は、見られず。だったんだよな??
目覚めて一瞬、どっちが現実かわからなくて。
・・・・不覚にもあの夢の男のこと・・・。
「藤真さん、バスもう着きますし・・・・痛いんですけど」
「!」
・・・・なんとオレの左手が、仙道の右腕をつかんでいた。
・・・・・・・・・・・力いっぱい。
どうやら、完全に夢と混同していたようだ。
「ご、ごめんな!」
・・・・・・・思いっきり、しかも爪を立てて掴んでいたせいで、
仙道の白くてたくましい(悔しいが)うでに爪のあとがくっきり赤く残っていた。
「あら~、痕くっきり」
「・・・・仙道、すまない・・・・・・・・」
「別に構いませんけど。でもびっくりしたなぁ。必死にすがりついてくるから。
なんか怖い夢でも見てたんですか?」
怖くなんか、ちっともなかったけど・・・・
「ああ、そんなところだ・・・、痛そうだな・・」
「平気です。藤真さんの爪のあとなんて、なんか縁起いいし。
なんなら舐めてくれたりします?」
「バっっ・・・・・・・・!!」
「あ、着きますね」
・・・このエロ魔には、かなわない。
どうかしてる。
あの仙道をあの夢の男と混同するなんて。
・・・・さっき夢の中であのひとに触れたとき、
腕を掴んだときに感じたんだ。
オレは、この男が好きなんだって。
オレはふだんから占いとか運命とか信じるほうじゃないし。
今までのオレなら、
たかが夢で、何いってんだって、思う。
でも違うから。
あの夢は、ただの夢ではない気がする。
オレの願望にすぎない・・・いや、そうじゃない。
なんでオレの夢にいつも現れるんだ。
あんたは誰で、どっからきたんだ・・・・・・・。
なんにせよ。
きっとオレにとって神聖な意味をもつと思われる人と、
よりによってこのいいかげんエロ魔を混同するなんて・・・・・・・。
せっかく今朝の越野の話を忘れかけてたっていうのに、
さっきの『爪あと舐めて』発言で、また好色仙道のイメージが一気に噴出した。
ほんとにどうかしてるから。
その女の話をおもしろく思ってないオレも。
・・・合宿の部屋割りも・・・・・・・・・。
なんでこうなるんだよ、今年もかよっっ。
「合宿中、よろしくお願いします。藤真さん」
部屋割りの発表のあとにも、やっぱり目の前にはあの笑顔で。
1年前と変わらない、人なつっこい笑顔。
でも、その笑顔と同じで、おまえのいい加減さも、1年前となにもかわっちゃいないんだろ?
『だめだ、この男は危険なんだ』
そんなこと、わかってる。
『本気になったりしたら、好きになったりしたらダメなんだ』
ホンキ?
スキ??
仙道のことをホンキって、
スキって、
そう言うのかよ。
・・・・・・・なんだそれ。
だんだん、どんどん、胸がきゅって煩わしくなってくる。
あいつのちょっとテノールな重みのある声は、
オレの鼓膜を必要以上に揺さぶって、
呼吸を早めて、顔を上気させて。
頭の隅ではそんな挙動不審になる前の冷静な自分がなんか言ってる。
『恋ってやつは、ただの思い込みだ』って・・・・。
でもそれって、思い込んだらどうしようもないってことじゃないか。
始まってしまうってことじゃないか。
・・・・恋かよ。
なんだそれ。
なんなんだよ・・・・・・・・・。
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ELTとか聴きながら書いたのがまずかったのか、超乙女チックな仕上がりに。
とくにshapes of loveは、高校当時女のコ同士でカラオケいくと必ずみんなで大合唱でした。
あの頃君は、若かった・・・。