【あらすじ?】

 

K電産では色々な分野の改善提案で功績をあげた社員を、社長賞という形で毎年表彰している。

今回、この賞の受賞者の中に牧・藤真・清田、伊藤・神・花形がいた。

そしてこの6人(+その他の受賞者69名)は、揃ってお祝いのグアム旅行へ来た。

 

 

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「ねー、牧さん神さん、今晩何食べましょうね?」

グアムに来て2日目の夜、街中のスーパーマーケットを観光していた時に信長が声を上げた。

「今夜の夕食はディナーショーだよ。みんなで行くことに決まってるはずだよ」

「え?そうなんすか?」

「旅行会社の人が昨日あれだけ説明してたのに」

「はっはっは!聞いてなかったっす」

「ディナーショー、18時にホテル集合でそこからバスと言っていたな」

「そうですね。15分前にはホテルに戻れるようにここを出ましょう」

「ショーって、何みるんすかね」

「ダンスショーだよ」

「ダンス?」

「グアムのダンスって何だ?フラダンスとか、タヒチアンダンスとかか」

「チャモロダンスですね」

「チャモロ?はて・・・?」

「チャモロって、高貴って意味なんで直訳は 高貴なダンス ですね。

あ、チャモロっていうのはグアムの先住民チャモロ人で、彼らは紀元前2000年~3000年に

フィリピン、インドネシアを経由して渡来した東南アジア系の人種で」

「神、もうその当たりでよしとしようか」

「さすが歩くウィキペディア神さん・・・止まらねぇ!」

 

チャモロ・ダンスナイト

 

旅行者の運営しているシャトルバスに乗ってホテルに戻って来ると、

ディナーショーへの集合場所であるホテルのロビーにはすでに

K電産の顔なじみのある一同がパラパラと集まりだしていた。

その中に藤真と花形、伊藤と言った懐かしい翔陽高校のトリオもいた。

藤真と花形は普段は部署も違うしこういう場でなければゆっくり話す機会も少ない。

 

「よー、Kマートはどうだった?」

藤真が話しかけてくる。

「チョコレート、安かったっすよ!今まで見た店の中でダントツ安いっす!

お土産用で箱買いしちゃいました♪」

「あ、牧。俺ら、部署へのお土産どうする?まとめて4人からって渡せば良いよな?」

4人とは、同じエンジン生産技術部の牧・藤真・清田・伊藤のことだ。

「あ?土産なんているのか!?」

「・・・はぁ!!??いるに決まってんだろ!普段どれだけ皆から貰ってるよ?

しかも俺らしかグアム来てないんだから・・ただでさえ休み貰って仕事に穴開けてんのに」

「む・・言われてみればそうだな」

「まったく、お前っていつも堅物常識人間のくせに、そういうとこ抜けてんのな。

大方坊ちゃんで温室育ちだから、やってもらって当たり前で、やる側の人間のことなんて考え

たことないんだろ」

「何!?」

「藤真、こんなとこまで来てやめないか」

花形が悪ふざけを言う藤真をなだめる。

「そうですよ藤真さん」

伊藤も便乗する。

「あっ!はいはーい!!ちょっと出遅れちゃったけど

このチョコレート部署に配るつもりで買ってきたんすけど」

「え!?清田、マジかよ」

「あ、はい。チョコレートで、大丈夫でした?マカデミアンナッツ入りです!」

「良いよ、すごく良い!お前、やるなぁ!!」

「あ、だって俺1番下っ端だから、買いだしは俺の役目かなぁって思ってたから」

「えっ?下っ端って言うなら俺じゃん?」

伊藤が人の良さそうな瞳を清田に向ける。

「え?でも伊藤さんは年上だし・・年功序列かと・・

まぁ、堅いこといいじゃないすか!

このチョコで大丈夫なら、お土産の心配はもうないっすよ!」

「清田!ありがとう」

「そうだぞ清田!お前超ナイスプレーだよ!!

人がやってほしいことを回り込んでやれるなんて・・!

いつからお前そんな気のきいたやつになった!?すごいぞ」

そう言って褒めながら、藤真が清田の頭をくしゃくしゃと撫でる。

清田は、とても気持ちよさそうに、嬉しそうにしている。

「そうすか!!こんなに褒めてもらえると思わなかったす。俺、嬉しいっす!」

「うん!俺いますごく嬉しい。チューしたいくらい」

「チュ・・・チュー!?」

「ふっ、藤真!!」

「冗談だよ」

・・なんだぁ、冗談か。そう思って少し清田はしょんぼりした。

 

「清田、お前ホントいい仕事したよ。牧、清田に金払っとけよ」

「はぁ!?俺が!?お前と伊藤の分もか!?何故だ!?」

「あっ、牧さん、俺金払いますから。清田、いくら?」

「牧、全額負担しろ。伊藤、いいって。牧に払わせとけば」

「・・よくないだろ!意味がわからんぞ」

「金持ちのくせにチョコレートくらいで渋るなよ」

「肝心なのは代金ではなく、俺の気持ちの問題だ」

「お前、世の中は金使うか気ぃ使うかどっちかなんだよ。

お前は、金使う事でやってきた人間だろ?

良かったな、何にせよ金で解決できる程簡単なことはないんだぜ?」

「な・・なんて失礼なやつだ!人のことを汚い成金みたいに。

第一、だからと言って何故お前のチョコレート代まで払ってやらんとならんのだ!?」

「今回、俺の助言や清田の行動がなかったらお前、部署にお土産何も持たずに帰国するとこだったんだぜ。

そしたらお前、部署での立場なかったぞ??

もう事務の女子たちなんて、お前の頼んだコピーもシュレッダーもやってくれないだろうよ」

「バカバカしいっっ!大人なのに、土産買わなかったくらいでそんなことあるか!!」

「常識のある大人だから、だよ。もう、お前こそ大の大人がガタガタうるさいなっ。

あっ!お前、ちゃんとバスケの連中にも買っていけよ。そっちの面倒まで見きれないからな。

部署を忘れてたってことは、バスケのことももちろん考えてなかったんだろ」

「うるさいっ!お前にいちいち言われんでも、わかっとるわ!」

 

何もグアムに来てまでこんな風にケンカすることないのに・・・と思う反面、

牧と藤真のやりとりは、少し羨ましい。誰も間に入り込めない、熟年夫婦を想わせる。

仕事とバスケしかして来ず、他には自分の興味のあること以外はてんで無頓着。

自分のプライベートや周りの行事、冠婚葬祭はルールも解らず

その辺りは妻にすべて任せきっているちょっと天然な夫気質の牧。

一方、面倒くさいとブツブツ言いながらも色んな事に気がついてしまい

夫の無頓着さをサポートせずにはいられない・・見ていられなくて色々口も手も出してしまう

ちょっと神経質でお節介な妻気質の藤真。

 

本人たちに言ったら非難ごうごうだろうから伝えないが、誰もがそう思っていた。

牧さんって完璧に見えて結構抜けてるから、それを何だかんだで藤真さんがうまく補っているよな。

この2人は、お互い自分たちが2人揃ってより完璧だということを、

自覚しているのだろうか?恐らく、していないのだろう。

神はそんな風に2人のことを想って、ちょっとその関係を妬ましく思った。

 

 

「あー、皆さんお集まりのようですので、バスへ乗ってください。ディナーショーの会場まで20分くらいです」

旅行者の人に連れられて、みんな1台のバスに乗り込んだ。

その際も、牧と藤真は意地を張り合ってお互いがお互いの方を見ようともしなかった。

昔はもうちょっと大人しい関係だったんだがな・・・。

花形は、むくれてそっぽ向く2人をみながら考えていた。

最近の2人は、まるで更年期を迎えた老夫婦のようだ。

どうしてこうなってしまったんだろう。

しかし花形には、何故だかふたりの関係が悪化したから

こうなっているのではないとわかっていた。

むしろ、近づきすぎているから・・・

そして、今、彼らはきっと物理的にも、精神的にも離れられないんだろう。

それは依存なのか、執着なのか、

それとも・・・愛情を抱くことへの、照れ隠しなのか。反発なのか。

いずれにしても。

花形にしてみれば、そういった関係に藤真と陥ることはたぶんこの先もないから

牧を非常に羨ましいと思った。

なんでお前がそこの位置に座るんだよ。なんだよ。いいなぁ。

 

 

・・・そうこうしているうちにディナーショーの会場に到着した。

「えっと・・・チャモンダンス!!」

「チャモロダンスだよ、ノブ」

 

バイキング形式で皆それぞれ好きなものを食べる。

そこへ、本日海外挙式をしたのか新婚であるだろう日本人の別の一同がやってきた。

彼らはすでに相当酒を浴びているらしくすごいハイテンションだ。

すると、挙式で使ったのか、ブーケの生花をお互いの頭に飾りあっていた女子たちが

藤真を見て黄色い歓声をあげた。

 

「きゃー!この人すごく可愛い!!」

「か・・・かわいい・・」

藤真は、久しぶりのかわいいコールを直球で浴びせられて引いていた。

確かに、26才の大人の男に使う言葉ではない。

でも、わかります。かわいいですもんこの人。部下の俺から見ても。

そう思って、清田はひとりうなずいていた。実はこの瞬間、伊藤もうなずいていたのだが。

「お人形さんみたいーw」

「こんな可愛い人初めてみたー!まつ毛ながいー!黒目大きいー!!」

「お肌白いー!!毛穴がないー!!髪の毛さらさらーw」

そう言うと、その中の女子のひとりが藤真の髪の毛をいじりだした。

「え!?ちょっと何を・・・やめてください!」

「いいからいいからーww」

「絶対似合うからー!もっとキレイになるからー!」

「えっ・・何っ!?あっ・・・!」

 

・・そしてあっという間に藤真の頭はピンで刺した生花だらけになった。

濃いピンクにオレンジの蘭、白の良い香りのプルメリア。

 

 

「藤真・・・」

「なぁ!俺の頭今どうなってる!?」

「どうって・・・可愛くなってます」

めちゃくちゃ。

めちゃくちゃ似合ってます。

 

「ちょっと!これ、どういうことです!?」

「きゃーwやっぱりめちゃくちゃ似合うー!」

「私たちじゃ全然敵わないわねぇ。溜め息が出ちゃう」

「ちょっと・・もう、取っていいです!?」

「あっ!それ、この子の結婚式のブーケなのよ!

お祝いのおめでたいお花だから、今夜だけはそのまま、取らないで。

一緒に祝ってあげて!ねっ?」

「ねっ? ・・・って・・」

 

藤真はなにやら抗議したそうだったが

結婚式のお祝い、今夜だけ・・・という言葉に心を動かされたらしい。

「そんなこと言われたら取る訳にもいかないじゃないか・・・」

そういいながらむくれている。

そんな藤真を残して、女子たちはまたお互いの頭を生花で飾るのに夢中になっている。

 

「ちょっと!こんなのってありかよ。鏡・・やっぱいいや。怖いから見ないとく」

「気にしないで良いと思います。ものすごく似合ってますよ。写真いいです?」

神が、首からぶら下げたニコンの一眼レフのレンズを藤真に向ける。

「わっ!何するんだ撮影禁止だぞ!」

そういうそばから、清田が携帯の写メで藤真を撮影する。

「あっ!清田!てめぇ何してやがる!!携帯よこせ!削除しろ!!上司命令だ」

「わっ!職権乱用!!いいじゃないすか1枚くらい~!」

「藤真、暴れるな。すごく似合ってるぞ」

「花形・・・ホントか?おかしくないか?」

「まったく」

「ああ、まったく違和感がないぞ。スーツ姿よりもその方がよっぽど馴染んでいる。

あとはその品の悪い言葉を発する口が開かなければ、お前の商品価は相当高値だろうに」

「牧!!てめぇ言いやがったな!!」

「もう~!やめてくださいこんなところで!!」

伊藤の今にも泣きだしそうな抗議の声で、一同、素に戻った。

 

 

その後、何もなかったかのようにみんなで飲み食いをした。

藤真は、頭に色とりどりの花を飾ったままだった。

たぶん、花を飾ったこと自体、忘れているのだろう。

――そして、店中のライトが落ちた。

 

「あっ!暗くなった!!」

「ついにショータイムの始まりだね」

「チャモロダンスナイト!!」

「だね。ノブ、よく言えました」

 

 

初めて見るチャモロダンスは、清田にとって、芸術的な難しいことはよくわからなかった。

男性は上半身裸で、かなり激しい棒術みたいなことをやったりファイヤーダンスをしたり。

女性も挑発的な、上半身はバストだけ隠した衣装に、腰回りにボリュームを持たせた木材っぽい材質のスカートをはいていて。

悩ましい腰のラインをワザと見せつけるようにくねらせて。挑発的な笑顔で。

打楽器が少しやかましいくらいに鳴り響いて。

男性も女性も、たまに雄叫びのように、奇声を上げる。奇声同士で、お互いに呼応しだす。

南国のダンスはみんなこんな風なのかもしれないし、何せ、他を見たことがないのでわからない。

ただ、『とても楽しいダンス』だった。『血肉躍る』って、こういうこというのかな?

見ているうちに、身体が勝手にリズムを刻みだす。

これは、いつもより多めに入っているアルコールのせいだけではないはずだ。

 

 

そうしてリズムを取っていたら、舞台にいた男性ダンサーが客席に降りて来て、清田の目の前まで来た。

舞台に上がれと言っているのだ。

彼はもう、なんだか楽しくなって

着ていたTシャツを脱ぎ捨てダンサーと同じように上半身裸になると舞台に飛び乗った。

 

そして男性ダンサーたちの真似をして、「ホ―――ッッ!!」と奇声を上げて

打楽器に身を任せて踊り狂った。

 

清田の他にもどうやら数人の観客が舞台にあげられたようだ。

舞台は、混みあっている。人間で揉みくちゃだ。

 

その中に、なんと藤真が連れてこられていた。

頭の花飾りのせいなのか、彼自身の容姿のせいなのかわからないが

彼は女性ダンサーに囲まれ、女性の踊りを強要されていた。

恥ずかしいのか、どうして良いのかわからないように藤真はアタフタしていた。

清田がこんな藤真を見たのは初めてだった。新鮮で、可愛い、と思った。

 

彼は酔いと非日常に任せて藤真の前に躍り出る。

――今夜は無礼講ってことで、いけませんか??

 

「藤真さん!踊ろうよ!!」

「清田!!・・・踊ろうったって!俺、女の人の踊りやることになってるみたいなんだけど!?」

「何でもいいじゃないすか!どっちでも!!」

「どっちのダンスにしろ、俺できないよ!」

「そんな、ルールなんてないんです。決まりとか、わからないし!

好きなように踊れば、きっとそれで良いんす!!踊りましょう!!」

「え・・・え・・・!!」

「藤真さん、俺と踊ってよ!!」

「清田――!そんな、そんな」

騒がしい舞台上で、叫ぶようにしてお互い会話をする。

他のダンサーや客たちは、まるで自分たちのことを気にしている様子はない。

みんな思い思いに踊っている。清田は、藤真にもそうやって羞恥心を捨てて一緒に踊ってほしい。

「そんな!?・・そんな、何!?藤真さん、聞こえないっ」

「そんな・・・そんな真っすぐな目で見つめるな!心の自由が利かないだろ!!」

え?藤真さんは今、何と言ったんだろう。

清田にはよく、聞こえなかったけど・・・。

藤真の顔がいくらか赤い様に見えるのは、照明のせいか、酔いのせいか。

恥ずかしそうにしかめられた顔が、とても可愛い。

年上の先輩を、上司をそんな風に思うのはおかしいとどこかで思いながらも

清田は純粋にそう思った。

「とにかく踊りましょう!!ほらっ!」

「・・わっ!!」

清田は藤真の手を自分の方へ強く引いた。

倒れ込んでくる藤真を抱えるようにして、踊りだした。

「ホーッ ホ――――!!!!」

「清田!・・ちょっと清田!!」

「藤真さん、俺に任せて!!」

「わーっ!!」

 

そうやってされるがままになっていた藤真だったが

途中から清田や他の客と同じように、めちゃくちゃにステップを踏み出した。

「藤真さん!!・・どう!?」

「清田・・・何か、よくわかんないけど、俺、今・・すごく楽しいかも!!」

「でしょ!?ホ――――ッッ!!!!」

 

 

 

・・・こうしてディナーショーは終わり、ホテルへ戻るバスの車内。

「藤真さん、めちゃくちゃ良い顔してましたよ」

神が、一眼で撮った写真を見せてきた。

 

「あっ!写真撮ってたのか!?」

「いいじゃないですか・・ほら、これなんてすごく素敵な笑顔」

「会社では見せない顔だな」

「神さん!それ、データくださいね!!」

 

写真の中に、清田と藤真2人がフレームに収まったものが何枚かあった。

清田に腕を取られてされるがままに踊っている藤真。

でも、とても楽しそうで。

 

「ね、藤真さん、踊って良かったでしょ?」

「何かワケわかんなかったけど、すげー楽しかった」

「でしょ、でしょ!?・・ところで藤真さん、途中、俺に何て言ったんすか?」

「え?」

「真っすぐな目で・・・とか何とか、言ったでしょ?」

「・・そんなこと、言ったかな?」

「えー!言いましたよ」

「忘れた。所詮、重要じゃないことだったんだよ。簡単に忘れるような」

「えー!?まじすか!?思い出してくださいよぉぉお」

「や、もうわかんないもん。ただ、お前、カッコ良かったぜ?」

「え!?俺カッコ良かった!?」

「・・冗談だよ」

「うわーっ!ひでー藤真さん!!今の、ちょっと本気にしたのに・・」

「何だ?どうした」

「牧さん~、藤真さんがいじめる!」

「藤真、事情はわからんが、清田をからかうのはよせ」

「からかってなんかないさ。ホントのことだからな」

「え?」

「お前、カッコ良かったぞ。見つめられて、どきどきした」

「はぁ!?」

「何それ?藤真さん、ノブに恋しちゃった?」

神が横から茶々を入れる。

「どうせ、また、冗談、とか言うんでしょ、藤真さん・・」

ちょっといじけたように清田が言う。

そんな清田の様子にいたずらに微笑む藤真。

「いや・・・恋をするっていうのとはちょっと、ちがうけど、

なんかわりとどきどきした・・かな」

「え!?藤真さんそれって」

・・そう言いかけた清田の頬っぺたに、チュッと軽くキスをした。

「「「「はぁっ!!??」」」」

当の本人の清田も、何が起こったか理解できない様子で

頬っぺたを抑えて固まっている。

しばらく茫然としていたと思ったら

「・・・ふ、藤真さん!!!?今のは!?」

「うーん?俺、今日ちょっと飲みすぎたかなぁ」

「・・はっ!じ、神さん!!今の写真に撮りましたか!?」

「え・・・えっ!?撮れる訳ないじゃん!!」

驚き過ぎて、一同固まっていたのだから。

「はーっ!!!!もうこんなチャンス一生ないかもしれないのに!!

どうしようどうしよう!・・藤真さん、もう1回お願いします!」

「ヤだ」

「えー!!??・・じゃあ、じゃあっ、俺からしていいっすか!?」

「ばか。良いわけねーだろ」

「そんなぁぁぁああ!!・・・はっ!また踊ればいいんだ!

そしたらまたしたくなるかも!?藤真さん、踊りましょう。今すぐに!!」

「もう疲れた。踊んねーよ、今夜は」

「今夜は!?じゃあ、じゃあ・・いつならいいすか!?」

「ああもう、うるさいの」

 

顔を真っ赤にしながらワタワタする清田に、

あまりに刺激的な信じられないシーンを目撃して、固まってしまっていた一同。

その中で、ただ藤真ひとりだけが
とても楽しそうにコロコロ無邪気に笑っていた。

 

 

 

―――その後、数日後の日本。
K電産本社内、自動販売機前。

ジュースを買い、ついでにポケットの中の携帯のメールを
チェックしようとしていると・・・。

「信長くんじゃん~」

「あっ!仙道!!」

・・自動販売機の飲料補充に訪れた仙道と鉢合わせした。

仙道は、K電産の自動販売機管理の出入り業者をしている。

そして何故か、清田は仙道にタメ口なのだった。

 

「どうだい?最近調子は?」

「ああー、先週まで会社でグアム行ってたから、ツケが回ってきて忙しいんだ。嫌になるぜ」

「はっはっは、うんうん。それは仕方ないさ。遊んで良い思いしてきたんだからな」

「ま、そうだけどよぉ」

 

あ、グアムと言えば。

俺の携帯の壁紙。

「ふ、ふふふ」

「ん?どうした?」

「なぁなぁ、コレ見て」

 

見せたい様な、やっぱり独り占めしたいような、

一瞬で色んな感情が湧いてモヤモヤってなったけど、
最終的に見せつけたい!自慢したい!の感情が競り勝って。

 

「これ・・・?」

「すげーだろ!?藤真さん」

画面には、頭に南国の花をいっぱい飾って

少し恥じらい気味拗ねた様子の藤真さん。

どさくさにまぎれて藤真さんの写メを撮った時。

消さなかったんだよね・・・俺。

そして何故か神さんは、まだあの時のディナーショーのデータをくれないでいる。

 

「可愛くね?」

「可愛いねぇ」

「だろ?」

「でも、フツー壁紙にするかなぁ。上司のこと、好き過ぎでしょ」

「いいだろっ別に」

「このこと、藤真さんは知ってるの?」

「知る訳ないだろ」

もし知ろうものなら、烈火のごとく怒るに違いない。

「言いつけちゃおっかな~」

「うわっ!やめろよ!

とりあえずあの人、今日は出張で終日いないからな。

絶対に黙ってろよ。男同士の約束だからな」

「えー、俺、約束するなんて約束してないしな~」

「仙道!てめぇ!!」

 

 

こうして、また毎日は続いて行く。

でも、あの時の写真と、あの時の言葉と、あの時のキスは。

清田の記憶に、しっかりと残っていく。

 

「恋をするっていうのとはちょっと

ちがうけどわりとドキドキした」・・・・・。


・・・Do you wanna dance with me?

 

 

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清藤、長かった~!!

年明け一発目、1日で書き終えました。

2013.01.06。新年一発目を爽やかに始められて良かったです。

爽やか・・・か?よくわかんないけど・・・。

BGMは、capsuleのdreamin dreamin。

歌詞の甘酸っぱい感じが文句ナシに清藤!!