あ、アレ。
この前、俺のアノ人の視線を盗みやがった――。
バッシュを買いに行った先。
2件隣の店のショーウィンドで、目に止まったモン。
黒の、 『くらしっくはっと』
そのくれー(黒い)かっちりしたカタマリに向かってガンとばしてたら、
ガラスごしに店員がなんかあせった顔して、こっち見テタ。
見てんじゃねー!
BLACK HAT
A)THE BOY'S A TIME BOMB やつはまるで、時限爆弾。
「おい」
「ん?」
「コレ」
「お!どうしたこのハット。すごいカッコいいじゃん!」
「やる。アンタに」
「・・え!?」
何、その驚き方。
あんた、コレが欲しかったんじゃねーのか。
真っ黒の、かっちりのコレが。
なんかムカついたからそのボウシを ずぼ って
いきおいよく頭にはめてやったら、目まで隠れた。
アンタ、頭小さすぎ。
「ひゃっ・・おまえ、ハット嫌いなんだろ?見るなっていってたじゃん」
「言った」
コノ人、頭いーけどアホウだなってよく思う。
俺がボウシ嫌いなんて、言ったか。
たしかに 見るな とは言ったケド。
知らねーヤツのモンは。
そんなもん見たらアンタのキレーな目、腐るだろうが。
デモ、これは俺が買ったやつだからいーんだ。
俺のものが、アンタのものになるなら、別にいい。
それに思ったとーり、似合っテル。
顔がよく見えねーから実はなんもつけて欲しくねーけど、
またどっかのボウシ男についてかれたんじゃ、たまんねーから。
「それやるから、他のやつのはもう見んな」
「流川、オレがあのハット欲しがってると思って?」
「ちがうのか」
「・・・ほんっとありがと、とても嬉しいよ・・でもこれはおまえにかぶってほしい」
「ナんで」
「あのときオレさ・・黒のクラシックハット、見てたとき。
おまえに・・・その・・・ 似合いそうだな〜 って。
おまえがかぶったら絶対めちゃめちゃカッコいい・・・と思って見てたんだ」
何。
んだソレ。
早よ言え。
デモ、なんで。
藤真サン、顔赤いケド、
・・俺も、なのか?
なんか、照れくせー。
「・・あー、オホン!」
二人ともちょっとだまってた。
しーん となってたら、
・・なんか嘘くせー咳しやがった。
「ほら、かぶってみせてくれよ」
そういいながら俺の頭に真っ黒なソレ、かぶせてきた。
白い細い腕が、視界に入ル。
ホントは今すぐその腕をつかんで、どうにかしちまいてー。
そしてその人、ボウシかぶった俺を、
大きな、人形みてーな目で下からのぞきこんできた・・・
と思ったら、すげーいきおいで胸ぐらに抱きついてきた。
「やっぱり・・すげー似合うぞ、おまえ」
甘イ小さな、掠れタ声。
小さい頭だけが見エル。
頭、なでてやったらちょっとぴくって動いた。
サラサラして、気持チいい。
やべー、俺いま、
すっげー照れくせぇ。
この人、めちゃくちゃ可愛い。
・・・全部こいつのせーだ。
デモ、
こんなんだったら悪くねぇ。
好きかもしんねぇ、
あんたの好きな、コレ。
黒の・・・黒のくらしっくはっと。
やっぱり、
思い通り、
その真っ黒な引き金は、
息を呑むほどそいつに似合って。
オレは即効の金縛り。
彼に抱きついて、離れられない。
今回は、真っ黒なこのクラシックハットが引き金。
爆弾処理は見事に失敗、の屈辱。
時限爆弾は見事に爆発、の大惨事。
でも、
オレは一緒に吹っ飛んでもいい。
失敗の屈辱も、
爆発の大惨事も、
オレは大好き、イカれた爆弾処理班。
流川が時限爆弾なら、
オレはこいつの胸ぐらに抱きついたまま、
こっぱみじんになりたい。
オレの心臓やら脳みそやら体中、完全にイカれさす、
なんて危険で甘い爆発。
・・そして引き金の、このハット。
黒の・・・黒のクラシックハット。
流藤ほどパンキッシュなカップルはこの世にはいない、と言い張ってみました!
参考文献およびBGM:『Time Bomb (and Out Come the Wolves…というアルバムの4曲目)』 by RANCID